2010年10月3日日曜日

朝青龍の引退相撲,380人が断髪式に。

 昨日の千代大海につづいて,今日は朝青龍の断髪式が行われました。なんとかやりくりをして,この眼で見届けておきたいと考えていましたが,とうとう,その時間をつくることができませんでした。
 大の朝青龍ファンとしては慙愧に耐えません。いいわるいは別として,この種の力士は二度とお目にかかることはできないでしょう。少なくとも,わたしが生きている間には。それほどのインパクトをもった力士でした。
 あと2~3年は相撲を取ることができる,とわたしは期待していたのですが・・・・。そして,強くなってくる白鵬との千秋楽の一番を楽しみにしていたのですが・・・・。おそらくは,歴史に残る名勝負を何番もみることができただろうに・・・・と残念でなりません。すでに,朝青龍と白鵬との名勝負の何番かがわたしの記憶のなかに鮮明に残っています。いまでは,「You Tube」なるものがますます充実してきていて,これらの名勝負も無料でみることができます。それどころか,双葉山の70連勝に待ったをかけた一番をみることもできます。でも,これらは全部,過去の名勝負です。
 そうではなくて,大相撲の最高の楽しみは,いま,目の前で展開される名勝負を,からだ全体で感じ取ることです。ですから,今場所ですら,もし,朝青龍が現役で相撲を取っていたら,千秋楽はどんなことがあってもでかけて行っただろうとおもいます。それは優勝がかかっているとか,いないとか,そんなこととはまったく別の次元で,朝青龍と白鵬が繰り広げるであろう相撲の醍醐味を味わいたいのです。わたしのからだが真っ二つに割れて,半分は朝青龍になり,残りの半分は白鵬になって,両方に,同時に,身を入れて,目の前の両力士が繰り広げる相撲と一つになり切ってしまうこと,この瞬間,これがわたしのいう相撲の醍醐味です。
 この世界はもう芸能の世界とまったく同じです。そういうものを想起させてくれる相撲の取組というものは,滅多にありません。わたしの記憶に残っている力士でいえば,照国と羽黒山,栃錦と若乃花,柏戸と大鵬,千代の富士と北天佑(これは因縁相撲でしたが,みていて鳥肌が立ちました),といったところでしょうか。その後の横綱は,一人ひとりは,なかなか魅力的な人がいましたが,名勝負を展開してくれるような取組にはなりませんでした。
 ですから,久しぶりに朝青龍という個性派の力士が現れて,そこに,白鵬という本格派の力士の台頭をみたとき,これから面白くなるとわたしは確信していました。わたしが見届けることができたのは,立ち会いの攻防で,どちらが自分の得意の型に持ち込むか,ここまででした。それでも十分にからだが熱くなったものです。でも,これから起こるであろうと期待していたのは,往年の栃錦と若乃花が繰り広げた相撲でした。それはそれはすさまじいばかりの相撲でした。立ち会いの攻防もさることながら,がっぷり四つに組んでからの攻防も,二転三転しながら,どちらが勝っても不思議ではない相撲をみせてくれました。いずれも1分以上の長い相撲でした。この二人の取組が終わると,みているわたしもどっと疲れました。みているだけで疲労困憊してしまうのです。
 そういう相撲を,朝青龍と白鵬の千秋楽でみられる楽しみが,あっけなく切り捨てられてしまったのです。酒に酔って,顔なじみの男をちょっと可愛がっただけの話(本気で殴ったら,ただではすまいよ,と本人が証言している)。もちろん,似たような前科があったには違いないけれども,力士としてのこれほどの才能を,ポイ捨てにしてしまう「良識」に与することは,わたしにはできません。どの世界にも超「個性派」と呼ばれる「天才」はいるものです。いや,天才はみんな個性派です。良識をもった天才なんて聞いたことがありません。
 朝青龍の相撲は,残念ながら,二度とみることはできません。朝青龍がいたら,白鵬はもっと強くなっただろうとおもいます。白鵬にとっても不幸なことでした。

 これまでも何回か断髪式をみる機会はあったのですが,どういうわけか,毎回,なにかの都合でだめになり,とうとう一回も「断髪式」なるものをこの眼でみたことがありません。30歳代半ばで現役を引退し,あとは「年寄」として後進の指導にあたるのが相撲界の,ごく一般的な進む道です。しかも,「年寄」株は2億円相当(裁判所の判断。実際にはもっと高く売買されているらしい)といわれています。それだけの貯金を現役のうちにしておかなくてはならない,というわけです。これは横綱とか,相当に高い地位で頑張った力士でなければ不可能なお金です。そこにも,相撲界の不可解な裏事情が隠されているようにおもいます。この問題はまたいつか取り上げてみたいとおもいます。
 朝青龍は,相撲界から去って,別の世界で生きていくようですので,問題はありません。が,昨日,断髪式を終え,同時に「佐の山」親方襲名披露をした千代大海は,たいへんだったことでしょう。でも,大関として長く勤めた人なので,大丈夫でしょうが・・・。
 なにか,別の話がはじまりそうなので,今夜はここまで。

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