2010年10月27日水曜日

特集・大相撲『現代思想』11月号,今日発売。

 青土社からでている月刊誌『現代思想』11月号が今日,発売となった。その特集が「大相撲」。わたしも少しばかりかかわったので,ご紹介しておく。
 わたしの記憶に間違いがなければ,『現代思想』がいわゆるスポーツ関連で特集を組むということはこれまでなかったはずである。その月刊誌が「大相撲」を特集した。このことはまことに画期的なことだと言っていいだろう。なぜなら,これまでの一般的な考え方からすれば,スポーツと「思想」とは関係がないと考えられてきたからだ。極論すれば,「スポーツに思想はあるのか」と問われれば,大方の人は迷わず「ない」と答えるだろう。かく申すわたしも,真っ正面から「スポーツに思想はあるのか」と問われたら,やや口ごもりがちに「あ,あります」と答えることになるだろう。では,「スポーツ思想について説明してくれ」と言われたら,これまた深呼吸を二つ三つし,相当の覚悟をした上で,おもむろに重い口を開くしかないだろう。(この問題については,いつか,また,取り上げてみたいと考えている)
 というわけなので,『現代思想』が「大相撲」を取り上げてくれたことはまことに画期的なことだった,という次第。しかも,そこにわたくしごときがかかわることができたということもまた,まことに画期的なことだった。とはいえ,今回のこの企画に加わることができたのも,じつは,平凡社から刊行した『近代スポーツのミッションは終わったか』(今福・西谷両氏との共著)のお蔭である。担当編集者がわたしのところに尋ねてきたときに,そのことを教えてくれた。その意味では,まさに,今福・西谷両氏のお蔭なのである。このお二人にはいくら感謝しても感謝したりない,といっても過言ではない。
 そのなによりの証拠は,今回の特集もまた,今福龍太・西谷修の両氏にわたしが加わって「大相撲」問題をテーマに鼎談をしてほしい,という企画にみることができる。つまり,このお二人が加わることによって,「大相撲」が「思想」のことばで語るに値するものになりうる,というのが編集者の判断だった。ということは,体育・スポーツの研究者だけでは,いまもなお「大相撲」を「思想」のことばで語るだけの力はない,という裏の判断があるということを意味する。このことは,わたしにも痛いほどよくわかるので,そのとおりだと思う。
 できあがった雑誌をみると,「鼎談」ではなく,「討論」ということになっていて,おやおやと思いながらも,雑誌というものはこんな風にして「つくられる」ものなのだ,ということを知った。われわれ3人は,『近代スポーツのミッションは終わったか』以来の定番となっているが,なんの事前の打ち合わせもなしに,時間ぎりぎりに集まって,どんな風にしましょうかねぇ,などと雑談しているうちに,いつのまにか本番に入っていた。それでもなんとかかたちになってしまうというところが,このお二人のすごいところ。わたしは,ただ,ひたすら,おろおろしながら話題についていくのが精一杯。なんとか採用してもらえる話をしようと必死・・・・。気がつけば,予定の2時間があっという間にすぎていた,というのが実感。
 そんな風にしてできあがったのが,われわれ3人の「討論」となっている。驚いたのは,われわれの収録が終わって(午後6時),翌日の昼ころには,ゲラとなってメールで送信されてきたことだ。それにわれわれが手を入れて返送し,すぐに,最終ゲラが送られてきて,応答して終わり。この間のスピードの速さ。まさか,あの忙しいお二人がこんなに早く応答されるとは,じつは思ってもみなかった。もっと,ロスタイムがあるものとのんびり構えていた。ところが,一番暇なわたしが遅れをとってしまった。またまた,このお二人のすごさを知ったという次第。遅れるときは遅れるが,やるときはすぐにやる,という臨機応変ぶりに,さすがだなぁ,と感動すらしてしまった。
 内容については,ご覧いただくとして,わたしの勝手な感想としては,2時間はあまりに短すぎた。テーマが「大相撲」である。しかも,いま,最大の話題になっている時事ネタである。しかも,時事ネタとはいえ,大相撲がこんにちのこのような事態にいたるにはそれなりの歴史過程がある。そのためには語らなくてはならないテーマがあまりにも多すぎる。だから,2時間ではとてもとても時間が足りない。本気でやるなら,「徹底討論」という形式にして,とことん語り合うべきであろう。そうしたら,もっともっと面白いものになったのでは・・・・,と想像したりしている。
 いずれ,どこかの月例会で取り上げていただいて,議論ができればと思っている。
 この特集には,われらの期待の星,井上邦子さんも登場する。さらに,われわれにもお馴染みの寒川恒夫,高津勝,リー・トンプソン,という人たちも登場し,それぞれに力作を発表している。ぜひ,ご覧いただきたい。そして,感想などをお聞かせいくだされば幸いである。

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