2010年10月9日土曜日

ふたたび「強制起訴」について。

 昨日というか一昨日の深夜に,眠い目をこすりながら書いたブログを読み返して,ことば足らずの説明に冷や汗を流してしまいました。これは「まずい」と反省していたら,今朝の朝日の「耕論」(オピニオン)で「強制起訴」をとりあげ,3人の論者の見解を紹介していました。この人たちの意見を熟読しながら,もう一度,わたしなりの考えを整理しておく必要があると痛感しましたので,しつこくも,もう一度,「強制起訴」について,という次第です。
 3人の論者の主張は,新聞の見出しのまま転載すると,佐藤善博さん(弁護士)の「冤罪防止には問題ある制度」,大出良知さん(東京経済大現代法学部長)の「推定有罪の現状覆す好機」,そして,立花隆さんの「民意は検察権力の上に立つ」というものです。これらを読みますと,それぞれの立場がはっきりしていて,その立場に立つとそのようにみえてくる,ということが理解できて,わたしにはとてもいい勉強になりました。なぜなら,その人の立ち位置によって,この検察審査会に対する見方・評価は異なる,ということがわかったからです。となると,では,わたしはどういう立ち位置にいるのか,つまり,ひとりの人間として,あるいは,ひとりのスポーツ史・スポーツ文化論研究者として,どのようなスタンスをとるのか,ということが問われていると理解できたからです。もっと言ってしまえば,その人の思想・哲学がいかなるものなのか,ということが剥き出しになる(露呈される),と言ってよいでしょう。
 佐藤善博さんは,『痴漢冤罪の弁護』という著書も書いていらっしゃるように,痴漢という冤罪問題を専門に弁護士活動を展開されてきた方です。その立場からは,「冤罪防止」という点では「問題ある制度」だとおっしゃっています。そして,大出良知さんは,裁判員制度もふくめて市民参加の司法制度改革を推進してこられた方ですので,今回の「強制起訴」は,まさに,これまでの司法制度を「覆す好機」というように主張されています。最後の立花隆さんは,ご承知のように『田中角栄研究』という著書もある,いうなれば,政治権力者の裏側の事情に精通された方です。そして,きわめて冷静に今回の「強制起訴」を受け止めつつ,「民意は検察権力の上に立つ」という大原則を提示されています。わたしとしては,立花隆さんのおっしゃる主張にもっとも強くこころが動かされました。前半の原則論は,わたしのような素人にもわかりやすく,しかも深い内容で,これは新聞で確認してみてください。で,その最後のところにズバリと,つぎのようにおっしゃっています。
 「事件のポイントはただ次の一点にかかわる。政治資金収支報告書の不実記載は全部小沢の秘書たちが勝手にやったことで,小沢は何も知らなかったのか否かである。強制起訴の議決がいうように,小沢が何も知らなかったはずがないという証拠と傍証は山のようにある。これは起訴しないほうがおかしい。あとは本気でやる気がある弁護士たちが検察官を代行し,補充捜査をたっぷりしたうえで裁判にのぞむことだ。」
 この立花さんの主張に,わたしも諸手を挙げて賛成です。
 で,このことを明らかにした上で,昨日のブログの補足を少しだけさせていただきます。
 アメリカの制度をそのまま日本に移入することの是非をどのように考えるか,というのが,じつは昨日のブログで言いたかったことの核心部分です。
 拳銃をもつことが州によっては許されているそういう国家,つまり,自分の命は自分で守ることを当然の権利として主張し,しかも,それが許容される国家,もっと言ってしまえば,自己責任という意識がきわめて強い人たちが圧倒的多数を占める国家,それがアメリカという国家です。だから,かの国の人びとは,道路を歩いていて転んで怪我をしたら,すぐに裁判を起こして,道路に穴ができていたのを放置しておいた自治体の責任だと主張して,補償金をゲットするのが,ごく当たり前のこととして行われている,とうわけです。そういう国民意識に支えられた国家の「裁判員制度」や「検察審査会制度」を,そのまま,なにかにつけて自己主張という点ではウブな日本人の社会に導入してしまっていいのか,というのがわたしの言いたかったことの主要な部分です。つまり,このような制度を日本の社会に持ち込むのであれば,それなりの備えが必要ではないか,ということです。もう少し補足しておけば,段階的に導入する,という方法もあったのではないか,と。
 小学校から「英語」を教えるという制度改革も同様です。どこぞの企業のように,株主総会を英語でやる,というような珍現象まで起きています。
 このままいくと,日本は,まず,間違いなくアメリカ国旗である「星条旗」の第51番目の「星」に加えられてしまうのではないか,とわたしは憂えているのです。どうも,星条旗の星の数を増やすということをゴールとする大がかりなアメリカの「戦略」が極秘裏に展開されていて,日本はまんまとそのターゲットにされているのではないか,と危機感すら感じています。中国はやり方が稚拙なので,丸見えになっているため,中国への危機感を抱いている人は多いとおもいます。しかし,それよりも恐ろしいのは,気づかないうちに取り込まれてしまう,という絶妙なテクニックです。
 「検察審査会」そのものの存在や,その機能のさせ方を否定するつもりはまったくありません。ただ,こうした制度導入が,日本の「アメリカ化」につながっていく,亡霊のような意図が感じられる,その点が心配だ,という次第です。
 まあ,この問題をきちんと説明するには,もっともっと多くを語る必要があるとおもいます。が,どうか,わたしのほんうとの意とするところをご賢察くだされば幸いです。

 ※再度のお詫び。「冤罪」の間違いでした。正直に告白しておきます。わたしがこの漢字を間違えたまま覚えてしまった,という恥ずかしい話です。ですから,パソコンでいくらキーボードを叩いてもでてこない。パソコンの方が賢いということ。なんともはや恥ずかしいかぎりです。お詫びして訂正させていただきます。冷や汗,タラタラ。この誤りを内緒で教えてくれた友人に感謝。

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