2015年4月3日金曜日

脚力への過剰な負担が上半身を緊張させます。李自力語録・その57.

 久しぶりに李自力老師が稽古に顔をみせてくださいました。いつもよりも,どこかすっきりしたいいお顔をしていらっしゃいました。いい男がますますいい男に。なにかいいことがありそうな予感。わたしたちもいい気分。

 さて,久しぶりだったこともあって,最初はアップをしながら,じっとわたしたちの稽古をご覧になっていました。ひととおり,24式の稽古まで終わったときに,集合がかかりました。とくに,わたしに向けて,つぎのような指摘がありました。

 もっと高い姿勢でやりなさい。無理して重心を下げると,その分,両脚の負担が大きくなります。ということは,両脚の筋肉を全開にしなくてはなりません。つまり,ふだんとは違う過剰な筋力を必要とします。そうなりますと,下半身が緊張でいっぱいになります。その緊張が全身にも広がります。とくに,上半身の肩・首・両腕に現れます。そのため,なにをやっても,上半身はカチカチに固まってしまい,全体的にみてもギクシャクした動作になってしまいます。

 まずは,脚の負担をできるだけ軽くすること。つまり,高い姿勢を保つこと。立っていることが負担にならない程度に高い姿勢を保つこと。そうすれば,上半身の緊張がなくなります。この状態で24式をとおしてご覧なさい。からだも楽ですし,気持もリラックスして,とてもいい太極拳が表出してくるはずです。こころもからだもすべてよし,となります。ここが太極拳で<遊ぶ>場なのです。ここを目指しなさい。

 わたしはショックでした。上半身を緊張させないように笑顔をつくったり,意識的に脱力したり,楽に楽にと言い聞かせたりして,自分としては上半身の緊張は卒業したものとばっかりおもっていましたから。思わず「まだ緊張してますか」と李老師に問いただしてしまいました。すると,こんな風に,と言って例の「ものまね」をされてしまいました。それをみて,ふたたびショック。

 ですから,「そんなはずはない」と食い下がりました。すると,李老師は,「意識的には緊張していないように思えても,脚に極度の緊張があれば,無意識のうちに首・肩は緊張してしまいます。これは,自分では気づきません」とカウンター。もうこれ以上はなにも言うことはありません。なるほど,緊張がほぐれて,完全に「弛緩」するには,まだまだなのだ,と納得。

 これまでは,脚力を強くすれば,バランスもよくなり,安定してくるはず,そうすれば,上半身の緊張もなくなるはず・・・と考えてきました。そして,脚力もかなりついてきましたので,重心を下げてもできるようになってきたつもりでした。が,それは自己観察であって,他者観察によれば,しかも,李老師のような人の眼からすれば,まだまだ早い,ということなのでしょう。もっともっと力を抜きなさい。そのためには高い姿勢から始めなさい。つまり,初手からやり直しなさい,というわけです。これもまたショックでした。

 もう10年以上も太極拳の稽古をやってきて,いまふたたび初手からやり直しだ,と宣告されてしまったのですから。なにをか況んや,です。

 しかし,よくよく考えてみれば,これまで身につけたものを一度,全部捨て去って,初手から組み立て直すということは,ひょっとしたら,もう一つ上のステージに上がれ!と言われているのかもしれない,と気づきました。そうだとしたら,これまでの貯金を潔く,さっさと捨て去り,O(ゼロ)からやり直しをすればいい,と。つまりは,「死と再生」。

 そうとわかれば,踏ん切りもつきます。

 明日からはまったく次元の異なる世界での太極拳を楽しめばいい。いやいや,それしかない,とおもえばいい。まったくの自由な世界を堪能すればいい。

 さてはて,結果やいかに。楽しみです。

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