2014年7月10日木曜日

新国立競技場問題はいまも「藪の中」。でも,少しずつボロが露呈。東京五輪はだれのためのものか。

 昨日(7月9日)の東京新聞一面トップの記事で,新国立競技場のデザインコンペの審査経過を大きく取り上げていました。そこに躍っていた見出しを拾ってみますと,以下のとおりです。

 3作同点から委員長一任
 「新国立」選考の経緯判明
 安藤忠雄氏 1点を除外
 一部懸念の当選作 即決

 結論から,わたしの感想を言っておきますと,推測どおり委員長の安藤忠雄氏の独壇場。最初から結論ありき,の審査の経緯が浮かび上がっています。審議経過のなかで,当選作(いま,問題になっているザハ・ハディドさんの作品)については一部の委員から懸念の声もあったにもかかわらず,委員長一任を受けて,安藤忠雄氏はその場で「即決」した,と新聞は報じています。



 この記事のリードの文章を引いておきましょう。

 新国立競技場のデザインを決めた2012年の国際コンペの最終選考で,三作品の評価が同点だったにもかかわらず,委員長だった建築家の安藤忠雄さんが一作品を外し,二作品に絞ったことが分かった。本紙が日本スポーツ振興センター(JSC)への情報公開請求で入手した審査委の議事録で判明した。審査委で最終的な判断を一任された安藤さんは,英国在住の建築家ザハ・ハディドさんの作品を選んだ。

 記事をよく読んでみますと,このデザインコンペの委員は建築の専門家10人で構成。しかし,英国の著名建築家リチャード・ロジャースさん,ノーマン・フォスターさんの2人は会議には出席せず,事前説明を受け,2次審査の投票結果だけ提出した,とあります。つまり,最終審査にはこの著名な建築家が欠席したまま,残りの8人(委員長も含めて)で決めたということです。なぜ,この二人の委員が欠席したのか,それは「藪の中」。でも,このことに関して,わたしの中に沸き起こってくる疑念を抑えることはできません。そこには,やはり,なにか特別の「作為」があったのではないか,と。

 しかしまあ,下手な邪推をしてみたところではじまりません。問題は,なぜ,国際コンペの審査過程を約2年間もの長きにわたって,非公開(内緒)にしなければならなかったのか,という一点につきます。これまで,各方面から,審査過程を明らかにしろ,という要望書が提出されてきたにもかかわらず,です。しかも,槙文彦さんをはじめとする建築家集団が,何回も,この当選作の是非についてまじめに議論するためのシンポジウムを開催しています。そして,そこに安藤忠雄氏の出席を求めています。しかし,安藤氏はすべて拒否。公の場には登場せず,この件に関しては一切,発言していません。このかたくなな姿勢も,わたしからすれば不思議で仕方がありません。やはり,後ろめたい気持がはたらいているのでは・・・・・と。

 7月7日に主たる建築家を招集して開催されたJSCによる初めての「説明会」も,なんと「非公開」でした。しかも,招集されたのは建築家のみです。槙文彦さんほか何人かの建築家たちは「非公開」ではなんの意味もない,として欠席しています。

 景観問題を重視する作家の森まゆみさんたち市民団体の要望は,いまも「無視」です。

 ということは,公開で説明できるだけの「根拠」をもって「決定」したのではない,その場の勢いで,ある声の大きい人の意志にしたがった,とよくあるお役所仕事の裏事情が透けてみえてきます。わたしも,かつて,文部科学省や県の教育委員会の小さな会議に駆り出されたことがありますので,その実態は周知しています。たぶん,そのままの体質がいまも継承されているのでしょう。

 しかし,そこで問われることは,東京五輪はだれのためのものなのか,ということです。とりわけ,なんらかの問題が生じた場合には,多くの関係者を集め,徹底した「公開」の討論を積み上げ,国民の多くを納得させることが第一です。なにせ,国民の税金を主たる原資として行われる国民的事業なのですから。

 JSCは,基本方針は変えない,と豪語しています。が,どこかで疚しさを感じている様子。あと一息です。世論の強い反発にあえいでいる,とわたしには見えてきます。まもなく,現国立競技場の解体工事がはじまることになっています。が,それまでにクリアしなくてはならない問題が,JSCには山積みです。解体業者の選定(すでに,一回,失敗しています),組織委員会と東京都との確執も露呈しつつあります。そして,なによりも資材不足,労働力不足,そして急騰する費用の問題が待ち構えています。

 いまや,東京五輪招致運動に浮かれていた時代とは,まったく異なる厳しい情況が(フクイチを筆頭に),日に日に増大しています。いまからでも遅くはありません。東京五輪のための新規競技場施設の規模縮小を視野に入れて,もう一度,原点に立ち返る「勇気」が,いま,なによりも求められているのではないでしょうか。
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