2014年5月12日月曜日

W杯競技場建設工事で死者が続出(2014年ブラジル,2022年カタール)。

 他山の火事だなどと呑気なことは言ってられない。W杯競技場の建設工事現場で死者が続出しているという。それも半端な数ではない。無理に無理を重ねると,どこの国で起きても不思議ではない。なにも,ブラジルやカタールだけの話では済まされまい。

 これから東京五輪のための競技施設づくりが,新国立競技場を筆頭に,あちこちで着手される予定だ。もうすでに,いまから,資材不足と労働力不足が叫ばれている。その結果は,建設費が当初の予定よりもはるかに高額なものになることがはっきりしている。しかも,法外な値段に。となると,建設費削減が当面の大きな課題になってくる。そのしわ寄せがどこにいくか。少し考えるだけでそれは明らかだ。

 同時に,外国人労働者の導入がもうすでにはじまっている。政府もその方針で,さまざまな手を打っている。しかし,労働者は頭数だけ揃えばいいという問題ではなかろう。ことばもままならない労働者が即戦力になるとは考えられない。工事現場の意思疎通はきわめて重要なことだ。チームワークのいい熟練の労働者によって,はじめていい仕事が生まれる。

 こうしたしわ寄せが,建設工事現場の事故の誘因になる。新聞に報じられたブラジルとカタールの死亡事故はこうした背景と無縁ではないだろう。

 ことしの6月にはじまるサッカーW杯開催に向けてブラジルではいま急ピッチで工事が進んでいる。これまでにもいろいろとトラブルがあって,競技会までに間に合わないのではないか,と心配されていた。その矢先,ブラジルではついに死者8人目が記録されたという。

 6月24日に日本対コロンビアの試合が予定されている,ブラジル中西部のクイアバの競技場建設現場で,電話回線を設置していた作業員(32)が感電事故で死亡した,という。かねてから工事が遅れていて,W杯の開催に間に合うのかと懸念されていた現場だ。地元警察は工事を中断させて捜査に入った。こうして,またまた,工事は遅れていく。そして,そのしわ寄せが・・・・。という具合に悪循環に陥ってしまっている。

 いっぽう,2022年にサッカーW杯開催が予定されているカタールでは,「関連の工事のために低賃金で雇われた外国人労働者の事故が多発している」という。すでに,1200人超の死亡者があったのではないかという情報もあり(国際労働組合総連合:ITUC),国際人権団体アムネスティ・インターナショナルはカタールに対して外国人労働者の環境を改善するよう求めた,という。いったい,1200人もの外国人労働者が死亡するような工事現場とはどういうところなのか,わたしには想像もできない。

 こんな考えられないようなことが,これから開催される予定のサッカーW杯の準備段階で起きている。こういう不可解な現実が,これからはじまる東京五輪の競技場建設現場で起こらないとは,だれも保障できないのだ。東京五輪招致が決定した瞬間のあの喜びようの背景には,こうした厳しい現実が待ち受けているということを忘れてはならない。

 そして,なにより恐れるのは,東日本大震災の復興がさきのばしにされていくのではないか,ということだ。すでに,大手ゼネコンの主要チームは東北から引き上げつつあるという。そして,東京五輪関連事業の入札に備えている,と。にもかかわらず,新国立競技場の,きわめて高度な技術を要する現場については,大手ゼネコンも入札に二の足を踏んでいる,という。

 いったい,この国は,なにを考え,どこに向かって,なにを,どのようにしようとしているのだろうか。じっくりと見極めて行かねばならないことが多すぎる。由々しきかな・・・・。
 

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