2014年5月28日水曜日

東京五輪「顧問会議」の議長にアベ君が就任。東京都は?

 東京五輪組織委員会会長森喜朗君がアベ君と会い,「顧問会議」の議長に就任することを要請。アベ君は「たいへん名誉なことだ」と快諾したという。この「顧問会議」は組織委員会に助言する組織で,約130人規模になるという。森氏の談話によれば「オールジャパン態勢で五輪招致に協力してもらった業界,団体に幅広く顧問に入ってもらい,お知恵を借りたい」とのこと。

 おやおや,である。

 五輪の主体は開催都市であるはずだ。つまり,2020年は東京都が開催の主体のはずだ。にもかかわらず東京都の存在がますます薄くなってきている。舛添君はいったいどういうつもりなんだろうか。国立競技場問題についても「これから視察をして勉強する」などと呑気なことを言っている。猪瀬君は出たがり屋さんだったので,必死になって目立とうと努力していたが,舛添君の姿がみえてこない。その間に,森君がヘゲモニーを握って,どんどん突っ走る。舛添君はおいてけぼり・・・か。

 約130人といわれる「顧問会議」のメンバーも,たぶん,森君の好みの人材がかき集められるのだろう。しかも,業界,団体から幅広く,と言っている。ああ,東京五輪で一儲けしようという輩ばかりが烏合の衆のように手を挙げている光景が眼に浮かぶ。そして,その頂点にアベ君が座る。なにをやりはじめるかは,火をみるよりも明らかだ。

 経済活性化という名のもとに手を替え品を替え,矢継ぎ早に,なんでもありの手を打ってくるだろう。そして,国民の眼を「経済」と「五輪」に釘付けにしておいて,フクシマをいかにして隠蔽するか,これが最大の目的だ。そのために「130人」もの人間をかき集めるのだ。もちろん,その中にはメディアのボスも抱き込んで,メディア操作も試みるだろう。そうして,ワッショイ,ワッショイのお祭り気分を盛り上げていくことだろう。そして,フクシマは国民の視野から遠のいていく。これがアベ君のいう「under control」の実態。

 要するに,東京五輪もまた権力と金をもつ人間たちの都合のいいように利用しようというだけの話だ。そうして,国民目線の五輪はどんどん遠のいていく。すべては「お上」のなさること,という旧態依然たる体質は少しも変わらない。国民の眼には「勝った,負けた」の世界だけをばらまいておけば,それですべてはうまくいく,と考えているらしい。いや,スポーツなんてそんなものだ,と単純に考えているのかもしれない。

 本来ならば,東京五輪を成功させるべく国民の声を草の根からを立ち上げ,国民が納得の上で全国的な盛り上がりを生みだす,そういう一大イベントであるはずだ。つまり,東京五輪は民主主義の大原則を実地に学ぶ絶好のチャンスなのだ。しかし,そんなことをして国民が目覚めてしまっては権力は都合が悪い。したがって,肝腎なところは極秘に,宣伝になることは公開し,という具合のご都合主義を貫くらしい。

 もうひとつの問題は,この「顧問会議」の設定は,組織委員会の責任逃れのための装置としても大きな役割が期待されているのではないか,という点だ。組織委員会が独走しているような印象を国民に持たれてしまうのはよくない。そこで,さも多くの意見を吸収しているかのような装置が必要だ。そのために,組織委員会が進もうとする方向を,「顧問会議」で発議してもらい,それを受けて組織委員会が拾い上げるというスタンスが無難でいい,というわけだ。

 あとでなにか問題が生じたとき,だれがそういう発議・提案をしたのかわからない方がいい。どうせ,尻尾をつかまれるような,まともな議事録は残さないのだろうから。かくして,だれかが責任を取らなくてはならないという事態を回避しようという組織として,この「顧問会議」は,まことに都合がいい。森君は組織委員会委員長としてやりたいことは,だれか別の委員なり,顧問なりに発議してもらえばいいのだ。そうして,「ああ,そうですか」という姿勢を貫けば,すべて思惑どおりにことは進む。

 いつのまにか日本の社会のなかに上から下まで定着してしまった「無責任体制」のひとつのシステムだ。おそらく,組織委員会にとってこの「顧問会議」ほど都合のいいものはないだろう。しかも,五輪が生みだす利益のおこぼれも,各顧問に満遍なく配分されるようちらつかせればいい。おとなしく「賛成多数」に身を寄せていれば・・・という期待をもたせつつ。だから,すべては仲良しクラブのお手打ち会議でことはすまされることになる。そのために「130人」もの規模の会議体が必要なのだ。

 かくして,わたしたちの眼のとどかないところで,東京五輪の根幹にかかわることはすべて決まっていく。そして,なにか問題が発覚したときは,「時間切れ」で逃げ込む。新国立競技場の建造と同じように。そんなことの繰り返しだ。

 どうやら,もっともフェアであるべきはずのスポーツ界がもっとも隠蔽体質が浸透しているらしい。なにか問題が発覚しそうになると,一斉に口をつぐんで,親分の顔色をうかがう。そして,親分の気に入るように「自発的隷従」の姿勢を貫く。そういう人間が,やがてトップに立つ。まともな意見を述べる者は,それが正当なものであれ,なんであれ,組織にとって不都合なかぎり排除されていく。

 今回もこの「顧問会議」の設立に異議申し立てをする人間は,スポーツ界からはでてこないだろう。「そんなものは不要だ。むしろ,われわれの声を吸い上げてくれ」と声を挙げる勇気のある人間はでてこないだろう。

 かくして,東京五輪は,政界,経済界,メディア界,などによって完全に囲い込まれ,乗っ取られていく。この組織体は,世にいう原子力ムラと瓜二つだ。

 それほどに,東京五輪は甘い蜜がいっぱいだ,ということの証左だ。そこには力の強い者ばかりが寄り集まってくる。そして,仲良しクラブを構築する。こうした果てしない連鎖が,社会の隅々まで浸透していく。困ったものだが,これが現実だ。

 なんとまあ,生きにくい社会になってしまったことか。
 仲良しクラブに入らないかぎりは・・・・。

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