2014年5月13日火曜日

日馬富士・乱舞,白鵬・目一杯,鶴竜・飄々。三者三様で面白い。

 日馬富士が乱舞している。なりふり構わずひとり相撲をとっている。このあと日馬富士がどんな相撲をとっていくのか,興味津々である。金を払って,この眼でとくと検分してみたいものだ。乱舞しながら徐々に自分の相撲にもどしていくであろう,そのプロセスをじっくりと味わってみたい。

 初日,嘉風の気魄を真っ正面から受けてしまい,吹っ飛ばされてなすすべもなく土俵下に落ちた。この傷は深い。ここから立ち直るのは大変だ。その結果が二日目の碧山戦にでた。「乱暴な相撲」と解説者が切って捨て,横綱らしくない相撲をきびしく批判した。しかし,この相撲はみている方は面白かった。あの張手の乱発がなにを意味しているのか。しかも,何回も負けてもおかしくない体勢を建て直す運動神経の良さ,そして,前に落ちない反応のよさ,最後は相手のふところに飛び込んで押し出し。

 よほど足首が悪いのか。それともこころの乱れからくるものなのか。もともとなりふり構わず,サーカス相撲も計算のうち。とにかく勝ち星を拾うためならなんでもやる,そういう横綱なのだ。二場所連続で全勝優勝をはたしたときも,何番も,負相撲を勝ちにつなげた取り組みがあった。それがこの日馬富士という力士の持ち味でもある。さて,今場所,このあとの取り組みをどのように建て直してくるか,興味はそこにつきる。うまく調整が進めば,場所終盤の5日間が盛り上がる。そのキーマンは日馬富士になるだろう。

 白鵬は一見したところ安泰,磐石にみえる。しかし,かれもまたどこかおかしい。今場所こそ優勝するぞとばかりに気合が入っている。わたしの眼からすると気合が入りすぎているように見える。そうしないと,ひょっとしたら負けてしまうかもしれない,という不安の裏返しのように見える。つまり,実力差が小さくなってきている,と自覚しているのではないか,と。その証拠に,ここ何場所か残り5日間の取り組みに負けが集中している。つまり,上位陣が力をつけてきて,その差がほとんどないところまできている・・・・とわたしは見る。

 白鵬の最大の焦りは,調子のいいときの日馬富士には勝てない,という過去の実績にみることができる。もうひとつの焦りは,鶴竜が力をつけてきたことだ。こちらもがっぷり四つに組むと勝ち目がなくなる。だから,白鵬はなんとしても,自分の相撲の流れに持ち込む必要がある。そのためには気魄で相手を圧倒する以外にない。だから,仕切り直しのときからはじまる,あの「にらみ」ようは異常だ。しかし,最近はその「にらみ」をものともせずに,むしろ無視するかのように,自分の仕切りに徹する若手力士が現れた。

 いま,白鵬の心中をよぎっているものはなにか。それを土俵上にみとどけるのも大相撲の醍醐味というものだ。その点で,後半戦が楽しみだ。

 さて,新横綱の鶴竜。飄々とした土俵態度は先場所と変わらない。しかも,からだの張りもいい。強くなっているようにもみえる。いつもの自分の相撲をとるだけ,という淡々としたこころの置き所が素晴らしい。勝ち負けを超越している。だから表情もまったく変化なし。気合が入っているのか入っていないのかもわからない。これぞ勝負師。終盤の横綱対決を制するのは鶴竜ではないか,とわたしは期待する。がっぷり組み合えば負けないという自信のようなものが伝わってくる。

 だから,あわてない。相手力士にも相撲をとらせておいてなお,余裕がある。あるいは,相撲がみえている。またまた,ひとまわり大きく成長したようにみえる。だとすると,まだまだ強くなりそうな予感に包まれる。わたしが注目している鶴竜の相撲のポイントは「股関節」のよさ。ここを見極めるのは「股関節」についての相当にレベルの高い知識を必要とする。それは,いつか書くことにして,結論だけ書いておこう。

 股関節がいいので,まず第一に腰がよく割れている。ついで,低い姿勢からの立ち合いができる。それ以後の攻防も腰の位置が低いまま相手を正面にとらえることができる。だから上体と下半身の軸が股関節を中心にしてぶれない。その結果として,軸脚にしっかりと体重が残ったままの半回転しての「はたきこみ」が生きてくる。もちろん,この「はたきこみ」は軸脚がぶれるとときおり失敗することがある。だから,安易に「はたき」に行ってはならない。でも,この「はたき」がある,と相手力士が意識するだけでもひとつの武器にはなっている。

 まだ大相撲ははじまったばかりだ。これから日を追うごとに,どの力士の相撲内容も変化してくるだろう。みんな智恵をはたらかせて作戦を練ってくる。そのせめぎ合いなのだから。

 しばらくは,じっくりとなりゆきを楽しむことにしよう。今場所の後半は眼が離せなくなるような,そんな充実した場所になりそうだ。楽しみ。
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