いまさら紹介するまでもなく,ほとんどの方は読んでいらっしゃることと思いますが,やはり,いい本は何回でもお薦めすべきだと考えました。ご存じ小出裕章さんの『原発のウソ』はまぎれもなき名著です。わたしは当分の間,この本をバイブルのようにして何回も何回も読み返してみたいと思っています。それだけの中味のある素晴らしい本です。なので,まだ,読んでいらっしゃらない人には,ぜひ,ご一読をという次第です。
わたしはこの人の静かなたたずまいのなかに一歩も引かない強い意志と情熱が感じられ,そこがものすごく好きです。わたしは香山リカさんがいうところの引きこもりでもニートでもありませんが・・・。その好感のもてる小出さんの姿勢はテレビでの証言(参議院)で強烈に感じましたし,この『原発のウソ』を読んでいても終始一貫してわたしに伝わってきます。この小出さんの不動の姿勢に,わたしは人間としての絶大なる信を感じとることができます。久しぶりに,こういう人に出会ったなぁ,とおもいます。幸せです。
参議院での証言のときもそうでしたが,無駄なことはひとことも言いいません。定められた時間内に,言うべきことを理路整然と述べ,しかも,そこに人間としての情感まで漂わせています。このとき,すでにわたしはホロリときてしまい,気持の温かい人なんだなぁ,としみじみ思いました。が,この『原発のウソ』を読んでいてもまったく同じことが,何回も何回もくり返し,じわじわと伝わってきます。ほんとうに凄い人だなぁと思いました。
この本の冒頭の文章から,いきなり,わたしはしっかりと惹きつけられてしまいました。
「私はかつて原子力に夢を持ち,研究に足を踏み入れた人間です。でも,原子力のことを学んでその危険性を知り,自分の考え方を180度変えました。『原発は差別の象徴だ』と思ったのです。原子力のメリットは電気を起こすこと。しかし『たかが電気』でしかありません。そんなものより,人間の命や子どもたちの未来のほうがずっと大事です。メリットよりもリスクのほうがずっと大きいのです。しかも,私たちは原子力以外にエネルギーを得る選択肢をたくさん持っています。
私が『原発は危険だ』と思った時,日本にはまだ3基の原発しかありませんでした。私は何とかこれ以上原発を造らせないようにしたい,危険性を多くの人に知ってほしい,それにどういう方法があるんだろうかと,必死に模索してきました。しかし,すでに日本は54基もの原発が並んでしまいました。
福島原発の事故も,ずっと懸念していたことが現実になってしまいました。本当に皆さん,特に若い人たちやこれから生まれてくる子どもたちに申し訳ないと思うし,自分の非力を情けないとも思います。」
ここからはじまって,順々に,わたしたち素人にもわかることばで原発のメリットとデメリットを解説してくれます。そして,最後には,類としての人間の絶滅のシナリオがはじまった,と説きます。しかも,いまならまだそのシナリオを止めることができる,と。その結論は,やはり経済優先よりも人間の命優先へと思考の回路を変えることだ,とおっしゃいます。「起きてしまった過去は変えられないが,未来は変えられる」と言われてしまうと,わたしなどは目頭が熱くなってきて,そうだ,そうだ,とひとりごとを言いながら嗚咽しています。
どうぞ,騙されたと思って,まだ読んでいない人は読んでみてください。
この程度ではまだ物足りないという人は,『放射能汚染の現実を超えて』(河出書房新社)を読んでみてください。初版は1991年7月です。チェルノブイリの原発事故が起きたあとに,原発がなぜ危険なのか,ということをかなり専門的にきちんと書かれた本です。こちらは相当に踏ん張らないと最後まで読み切るのはたいへんです。が,小出さんの主張するバックグラウンドを知る上では申し分のない本です。
国民の圧倒的多数が「脱原発」に向かっているというのに,政府はまたまた,原発ありきの政策に転換しようとしています。東電の力がどれほど強く政界をコントロールしているか,ということが垣間見えてきます。今日からはじまった全国知事会は,東電の政治献金に汚染されていないことを立証するかのように,「卒原発」なる新語まで登場させてひとつになろうとしています。
この本の書名にありますように,この本では『原発のウソ』がとことん解明されています。読後の強烈な印象は,東電は最初から政府と一体となって,原発に関するあらゆることがらを「ウソ」で固めてきたということがよくわかります。ですから,いまもなお,「ウソ」で押し切ろうとしています。国策という名のもとに,真実をひた隠しにし,都合のいい「ウソ」で固めて,あとはメディアをとおして押し切っていく,その体質はいまもまったく変わりません。
そのことのからくりもまた,この本を読むとすべてわかるようになっています。
ぜひともご一読をお薦めします。
騙されたと思って読んでみてください。
いま,日本が当面している原発事故がどれほどたいへんな事態にいたっているのかが手にとるようにわかります。人類の存亡の岐路に,いま,わたしたちは立たされているのです。ですから,わたしたちの意志表示ひとつで,人類の未来が決まるといっても過言ではありません。そういう時代を,いま,わたしたちは生きているということです。
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