2011年7月22日金曜日

うりずんで藤木勇人(テンペストで銭蔵筆者多嘉良役)さんにバッタリ。

14日から19日まで,沖縄にこれまでにない長期滞在をした。その間,日が暮れると自然にわたしの足はうりずんに向う。理由は簡単。居心地がいいからだ。泡盛が美味しい。料理が美味しい。そして,オーナーの土屋さんがニコニコ笑顔で迎えてくれる。運がよければ常連さんに会うことができる。わたしにとって,こんなにいいところはない。

今回は最後の夜,娘夫婦と土屋さんと一緒に呑みながら話をしていたら藤木勇人さんがふらりと現れる。大きなトランクを一つもって。帽子を深くかぶっていたのでわたしは気づかなかったが,土屋さんは一目見るなりすぐに反応して,「やあやあやあ・・・」と二人で握手をしている。わたしはまだわからなくて「どこかで見たことのある顔だがなぁ」と考えている。すぐに,土屋さんが紹介してくれたのですぐにわかった。「ちゅらさん」のときの居酒屋のおやじをやっていた藤木さんだよ,と。

こちらはすでに出来上がっていたので,元気よく「テレビよりもほんものの方がずーっと男前ですねぇ」と声をかける。藤木さんは「うちなーの噺家」という肩書があるように,会話のテンポがいい。二階でテンペストのスタッフと打ち合わせがあるので,さきにそれを終えてきます,と言って二階へ。30分も経たないうちに降りてきて,わたしたちの仲間入り。

テンペストの銭蔵筆者の多嘉良の役をやっているということで,話題はすっかりテンペスト。沖縄に行く前に『テンペスト』(池上永一著,角川文庫)くらいは読んでおかなくては,と思って読んでおいてよかった。こんなところで役に立つとは。読んだばかりなので話したいことは山ほどある。そこに,多嘉良役の藤木さんが現れたのだから,話がはずむ。

土屋さんも嬉しそうに割って入ってくる。「銭蔵というのは酒蔵のことなんだけど,琉球王朝時代には100年ものの泡盛の古酒が貯蔵されていて,その酒は「銭」以上の価値があったから,酒蔵とはいわないで銭蔵というんだよ。そこの管理人を「筆者」という肩書で呼ぶのは,銭蔵に関するすべての書類を書く人という役人の地位なんだよね」と蘊蓄を傾ける。さすがに,「100年古酒の会」を主宰する人だけあって,こと泡盛に関しては生き字引だ。

でも,銭蔵筆者の多嘉良は,その100年ものの古酒を盗み呑みしているんですよね,とわたし。それは小説での話。じっさいにそんなことをしたら即刻,打ち首だったはず,と土屋さん。そして,土屋さんは「銭蔵の管理人の役はぼくの役だよ」「ぼくにその役を回しなさい」と藤木さんに振る。藤木さんはあわてて,「せっかくいただいた大事な役をとられてしまったら,おまんまの食い上げですよ」と笑わせておいて,ドラマはこしらえものだから演技が必要なんです,ほんものは演技にならないんですよ,そのままだから,ぼくは俳優だから・・・と話がはずむ。

わたしも調子に乗って,どんどん割り込んで,われながらあきれるほどしゃべっている。泡盛の威力たるや恐るべし。ふだんは無口でおとなしい性格なのに。土屋さんが「大城立裕さんが,史実を歪曲していると言って『テンペスト』を批判してますよね」といえば,「それは大城さんが純文学の人だからで,その立場の人からみたら,『テンペスト』の中の話は作り話がいっぱい。第一,主人公の真鶴(女性)を宦官ということにして「孫寧温」という男性に仕立てあげ,科試(こうし)の試験を受けさせて琉球王朝の高級官僚として大活躍させること,このこと自体がありえない話ですから。この作品はあくまでもエンターテイメントとして楽しめばいいんですよ」とわたし。藤木さんも「そうそう,もともとがファンタジー・ノベルの世界で活躍している作家なんだから」といった調子。

こっちですっかり話がはずんでしまっているので,二階のテンペストのスタッフたちが心配して藤木さんを呼び戻しにやってくる。とうとう,プロデューサーまで降りてきて,こんどは名刺の交換がはじまる。

というようなことで,この話はエンドレス。
沖縄の最後の夜を娘夫婦と一献という場が,いつのまにか主客入り乱れての盛り上がり方になる。これが「うりずん」の楽しいところ。この夜もまた忘れられない思い出となりそうだ。
土屋さん,藤木さん,楽しいひとときをありがとうございました。
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