2013年1月19日土曜日

鳩山由紀夫が「国賊」なら,わたしも立派な「国賊」だ。

 政府自民党サイドから恐ろしい発言が相次いでいる。ちょっとただごとではないところに向って猛進(盲進)していく,その勢いに,唖然としている。自民党には河野洋平というご意見番がいるが,蚊帳の外に放り出して無視である。まともなことを言う人は邪魔なのだ。そして,自民党右派の仲良しクラブが手を結んで,盲進(猛進)していく姿は,危なくて仕方がない。

 たとえば,小野寺五典防衛相の「国賊」発言,小池議員の「鳩は鳩小屋に」発言・・・・。それに呼応するかのようにネット右翼が,悦び勇んで,トンチンカンな発言をくり返している。惨憺たる情況がネットの世界で展開している。なるほど,安倍君がネットの世界をこよなく愛しているというのも,まことによく理解できる。しかし,間違ってはいけない。ネットの世界は,原則として,匿名発言である。都合がわるくなると雲散霧消してしまう,そういう人たちが主流である,ということを。

 もちろん,話題の中心は,鳩山由紀夫元総理の訪中時での「係争地」発言に対する批判である。そして,南京大虐殺に関する発言である。

 これまでの鳩山由紀夫の言動をとおして,メディアが作り上げてしまった「宇宙人」イメージがあまりに強烈なために,いまも,多くの誤解に晒されている。その意味ではまことに気の毒な人ではある。が,この人の根っこにある純粋さ,素直さ,まじめさは,捨てたものではないとわたしは思ってきた。ただ,政治家としての段取りのまずさ,根回しの稚拙さが命取りとなって,あえなく政界から追い出されてしまった(民主党・ノダが,意図的・計画的に居場所を奪ってしまった)。

しかし,わたしは,鳩山由紀夫というひとりの人間が導き出す結論(政治課題)には,不思議に一致することが多かった。「最低でも県外移転」「消費税増税反対」「TPP参加反対」,などなど。ただし,それにともなう言動には,首を捻らなくてはならないことも多かったが・・・・。

 たとえば,こんどの「係争地」発言。これは,要するに「棚上げ」論だ。日中国交回復いらい40年にわたって,日中両国が合意し,両国ともにその合意を守ってきた,ひとつの重要な了解事項だ。それを無視して,突然,日本が一方的に「わが国固有の領土」であるとして「国有化」してしまった。その経緯はよくご存じのとおりである。驚いたことに日本共産党まで同調している。あちゃーっ!?である。まるで,日本国中,お祭り騒ぎである。こうなると,もう,歯止めがきかなくなる。まるで熱病にかかったかのように。

 にもかかわらず,アメリカ政府は,尖閣諸島にかんして「安保条約の範囲内にはあるが,領土に関してはとちらにも与しない」という姿勢を崩していない。国際社会もじっと息をひそめて見守っているようだ。ということは「どちらにも与しない」というアメリカ政府の姿勢を支持しているようにみえる。というより,「棚上げ」論を支持している,というべきか。

 そして,とうとう,アメリカの新聞(社説)が「尖閣諸島は日本が盗み取った」という見出しの記事を掲載した,という。その詳細を確認していないので,あまり,ですぎたことは言えないが,わたしとしては「とうとう,このような意見がでてきたか」というのが正直な感想である。この手の議論は,一度,はじまると燎原の火のようにあっという間に広がっていく。日本が袋叩きに合い,国際社会から日本の信用は一気に失墜してしまうのではないか,とわたしは畏れる。

 すでに,従軍慰安婦に関する河野洋平談話(1993年)を見直すという日本政府発言に対して,アメリカ政府は素早く反応し,それはならぬ,と釘を刺している。尖閣諸島に関する河野洋平の主張もじつに明確である(『世界』参照のこと)。日中国交回復時に合意した「棚上げ」論だ。ここに戻ってやり直すべし,と。その河野洋平の声を,いまの自民党政府は,まったく聞く耳をもたない。情けないかぎりである。だから,アメリカ政府は安倍政権に期待と疑問という,「?」マークつきの姿勢をくずしていない。

 くり返すまでもなく,わたしも「棚上げ」論から出直すべきだ,と考えている。そうして,日中両国が,つぎのステップの合意にいたるまで,じっくりと時間をかけて理解を深めることである。しかも,これまでも日本の「実効支配」を中国は容認してきたのだから。小泉政権も模索したように,日中共同開発というような「友好」を前提にした道を切り開くべきではないか。一刻も速く,国際社会から「盗み取った」と言われないように,先手を打つべきだ。しかし,いまの安倍君にはその耳ももたないだろう。となると,自民党沈没のシナリオは,外からやってきそうだ。

 鳩山由紀夫が「国賊」だというのなら,わたしもまた「国賊」の一員に加えてもらいたいものだ。「国賊」は裏返せば「救国の士」にもなる。「たった一人の叛乱」のような話ではあるが,ここは黙っているわけにはいかぬ。わたしなりの決意表明である。

0 件のコメント: