2015年7月27日月曜日

『なぜ,地形と地理がわかると古代史がこんなに面白くなるのか』(監修・千田稔,洋泉社刊)を読む。

 連日の猛暑。にもかかわらず,連日,戦争法案に対する抗議デモが繰り広げられています。頭が下がります。本来ならば,毎日でも,でかけていって一声挙げて・・・というところなのですが,やはり,いまのからだでは無理と考え,臍を噛んでいます。その代わりに,社会復帰の第一歩のつもりで,鷺沼への事務所通いをはじめました。

 できるだけ涼しいうちに家をでて・・・とおもうのですが,朝食後,ほんの少しだけとおもってパソコンをいじっていると,すぐに11時,12時になってしまいます。それでも思い切って家をでます。ちょうど,鰻登りに気温があがっていく真っ最中。電車で冷やされたからだに,熱風が容赦なく襲いかかってきます。それをじっと我慢して事務所に向かいます。

 事務所のすぐ近くにできたコンビニで,ポカリスエットとヨーグルトとバナナを買って事務所に駆け込みます。すぐに,空気を入れ換えて,エアコンをつけて,シャワーをひと浴び。でてくるころには,部屋は28度ちょうどになっていて,気持よく汗が引いていきます。しばらく,はだかのまま,ぼんやりと過ごしてから,いま,読めそうな本を読み始めます。

 
今日は,千田稔さん監修の『なぜ,地形と地理がわかると古代史がこんなに面白くなるのか』(洋泉社,2015年7月刊)を読みました。購入した動機は,千田稔さんの古代史に対する見方に,以前から興味をもっていたからです。そして,第二章 地形と地理から探る古代日本──飛鳥・奈良時代,というのが目次をみて目に飛び込んできたからです。これはきっと,これまでとは違う新たな解釈・見解が披瀝されているに違いない,と勝手におもいこんだからです。

 しかし,その期待はみごとにはずれてしまいました。
 たとえば,つぎのような魅力的な小見出しの節が並んでいます。
 Q18 なぜ,飛鳥に古代都市が建設されたのか
 Q19 なぜ,蘇我氏は仏教を受け入れ飛鳥寺を建てたのか
 Q20 なぜ,聖徳太子は飛鳥から離れた「斑鳩」に宮殿を建てたのか

 こんな問いが17項目も並んでいます。みたところ,いずれも魅力的なテーマばかりです。しかし,読んでみたら,いずれも気の抜けたサイダー同然でした。いわゆる初心者向けの概説で,教科書に少しだけ付け足した補足説明をしているにすぎません。とりわけ,「飛鳥」に関しては,もはや解釈が古くて,読むに耐えません。なぜ,最新の学説も取り入れて,読者をピリリッとさせる内容があってもいいのに・・・・と。

 つまり,そこには千田説もほとんど反映されてはいませんでした。あわてて執筆担当者を確認してみましたら,納得でした。第2章の執筆担当者は,上永哲矢(歴史文筆家),黒田香澄(山口市歴史民俗資料館文化財専門職員)のお二人。購入するときに,ここまで確認すべきでした。そうしたら,買わなかったでしょう。監修本には,これから気をつけたいとおもいます。わたしは,千田稔説が,新しいヴァージョンで書き直されているものと勘違いをしてしまいました。

 でもまあ,これから日本古代史の謎解きをはじめてみようという初心者には,絶好の入門書であることは間違いありません。しかも,もっとも温厚な古代史解釈の姿勢が貫かれています。ですから,とても手堅く,諸説を取り上げながら,現段階での論点を浮き彫りにさせてくれています。その意味ではとてもいい勉強になるとおもいます。

 しかし,いまや,古代史論争は,もっともっと,ずっとはるか先へ進んでいます。そして,ぎょっとするような仮説がつぎからつぎへと提起されています。それらについては,ほとんど触れられてはいません。編集方針がそういうものではないのですから,当然といえば当然です。それにしても,各項目に,たった一行でもいい,こんな新説も提起されている,くらいの指摘があってもいいとおもいました。そうすれば,古代史の謎解きの面白さがもっと浮き彫りになったろうに・・・・。と,いささか悔やまれます。

 でも,千田さんの名誉にかけても触れて置かなくてはならないことは,いくつかの項目のなかには秀逸な解説をしているものもある,ということです。かく申すわたしも,なるほど,なるほど,とおもった項目も少なくありません。

 まあ,リハビリを兼ねて,さっと読むにはとてもいいテクストでした。こういうものを読みますと,もうずいぶん前に購入して,途中まで読んでストップしてしまっている『日本古代史と朝鮮』(金達寿著,講談社学術文庫,2011年刊)を読もうという意欲が湧いてきます。こちらは,徹底して「飛鳥」の謎解きに迫っています。つまり,天智・天武・持統の時代になにが起きていたのか,そして,藤原不比等とは何者なのか,を同時代の朝鮮からの視線で解きほぐそうとする,意欲作です。

 日本の研究者の虚をつくような仮説がつぎつぎに飛び出してきて,きわめて刺激的です。しかも,その根拠をマニアックに追求していきます。古代史の謎解きのひとつの典型的なサンプルとして,わたしには魅力的です。

 いずれ,このテクストについてもこのブログで取り上げてみたいとおもいます。
 以上,本日のブックレヴューまで。
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