2011年1月31日月曜日

西谷修さんのブログを推薦します。

 エジプトの動向が気になっていたら,今日の朝日の夕刊のトップに「米,新政権移行を支持」と大見出しにあり,「ムバラク氏と距離」と小見出し。一瞬,わたしの思考回路はフリーズしてしまいました。
 150人もの犠牲を払った民衆のやむにやまれぬ覚悟の意志表示が,ようやく「国際社会」に認められる方向に一歩を踏み出したという思いと同時に,アメリカという国はなんとまあ「ご都合主義」の,自分勝手な国なんだろうか,と。あれだけ(30年間もの長い間)ムバラク政権を支持し,ムスリムを弾圧することに肩入れしてきたにもかかわらず,形勢不利とみるや,手の平を返す,このやり方。わたしたちはしっかりとこのアメリカン・スタイル(流儀,やり口)を見届けておくことだ。自分たちにとって不利だと判断すれば,いともかんたんにとかげのしっぽ切りを断行する。この計算高さ。でも,子供騙し。
 でも,よくよく考えてみれば,ムバラク追放を要求している民衆のこころの奥底には,アメリカこそ憎き手配師,もういい加減にしてくれ,という強い不満が渦巻いているはずだ。しかし,その感情をいちはやく察知したかのように,「新政権移行を支持」という立場を表明したのは,いかなる計算のもとでのことか。新聞によると,トルコ,イスラエル,サウジアラビア,英国の首脳に,オバマ大統領が直接,電話で「エジプト国民の願望に応じる新政府への秩序ある移行」を伝え,協力を求めた,という。はたして,これらの国がどのような応答をしたのか,しばらくは眼が離せない。もし,このまま,エジプト革命がなし遂げられることになれば,中東世界にくすぶっているイスラム勢力も黙ってはいられなくなる。いな,もう,すでにさまざまな動きが始まっていると聞く。ひょっとすれば,一気に連鎖反応的なドミノ現象が起こる。その可能性はきわめて高い。
 と思っていたら,西谷修さんが,ブログで「混迷のエジプトでアルジャジーラの放送禁止」というタイトルの文章を書いている。このブログを読んで,わたしの頭のなかはかなりすっきりとした。これまで曖昧だった中東問題の根源にあることがらが,手際よくまとめられていたからである。その上で,アルジャジーラの問題である。アルジャジーラの放送をシャットアウトしているエジプト政府(つまり,ムバラク)のやり口は,これまでのアメリカがとってきた路線をそのまま引き継いでいるのだから。それどころか,アメリカは,もっと攻撃的にアルジャジーラがいることを承知の上でその支局を攻撃し,死者まで出している。そのアルジャジーラの放送を禁止したムバラク政権に,アメリカは距離をおくという。この矛盾。
 そして,このスペースにはとても書き切れないが,と断りを入れつつ中東問題の核心部分(アルカーイダが登場することになった歴史的背景など)について,きわめてわかりやすい解説をしてくれている。このブログはお薦めなので,ぜひ,読んでみていただきたい。アドレスは以下のとおり。
 www.tufs.ac.jp/blog/ts/p/gsl/
  これで駄目だったら,「西谷修」で検索すると,「西谷修-Global Studies Laboratory」という見出しがでてくるので,ここをクリックすれば,そのままブログに入っていくことができる。このブログを読むと,西谷さんは,すでに,20年も前からベンスラマの企画したシンポジウムに参加して,この問題に深く関与していることがわかる。それだけに,いかなるメディアも伝えられないような味わいのある内容のブログとなっている。ぜひ,ご覧ください。
 わたしのような者が,余分なことを言うよりは,西谷さんのブログを読んだ方が間違いがないし,わかりが早い。というわけで,このブログはここまでとする。
 あとは,西谷さんのブログをよく読んで,しっかりと考えてみてください。学ぶことがじつに多い。
 こんどの水曜日の「稽古のあとのハヤシライス」が楽しみ。いったい,西谷さんの口からどんな話が飛び出してくることやら・・・・。ボイス・レコーダーを用意しなくては・・・・。
 

1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

ご無沙汰してます。
昨日から寝ずにすっとエジプトの状況を追っています。
アルジャジーラとCNNをかけたまま、いま世界がおかれている状況を体験しています。
今日はDAY OF DEPARTURE。エジプト時間19時大規模な動きがはじまるそうですが、朝9時になる前からジャーナリストたちの排除の強行がはじまりました。アルジャジーラでさえ現在の状況を放送するのが困難な状況になっているようです。CNNのジャーナリストは既に危害を加えられている状況ですが、あらたに現地に向かった人もいるようです。
全世界がインターネット、ソーシャルネットワークを使用して情報交換を行い、エジプトを見守っています。
日本人のジャーナリスト、写真家からの生の声も聞こえてきています。
さまざまな思惑が露呈しています。いろいろ、たくさんのことを思うのですが、とにかくまずは目を離さず見てみようと思います。

イギリス、ガーディアン紙の写真です。平和的にデモをはじめた国民は武器らしいものをもたず、防衛手段はヘルメットではなく、鍋にペットボトルにバケツです。是非みてみてください。

http://www.guardian.co.uk/world/gallery/2011/feb/03/egypt-protesters-head-protection-helmets#/?picture=371390048&index=0