2015年2月8日日曜日

「この道しかない」はずはない! 西谷修×中野晃一対談(『世界』3月号),必読。

 いつも楽しみにしている雑誌『世界』3月号がとどきました。今月の特集は「不平等の拡大は防げるのか」で,伊東光晴,間宮陽介,ロバート・ライシュ,ウォルデン・ペローの4氏の論考が掲載されています。そして,対談「この道しかない」はずはない!(西谷修×中野晃一)が表紙を飾っています。まずは,ここから・・・・という次第で読み始めました。

 
この間の選挙で政府自民党がかかげた「この道しかない」というスローガンが登場してくる背景がもののみごとに抉りだされています。そして,このスローガンがいかに欺瞞に満ちたものであるのか,というからくりをわかりやすく解説してくれています。お二人の冴えわたった思考にもとづく対談が深く印象に残ります。

 たとえば,以下のような発言があります。

 「安倍政権のDV的手法は,解釈改憲による憲法の破壊,社会保障の切り下げによる貧困の悪化,さらには特定秘密保護法の制定やメディアコントロールなど情報の遮断にまで及んでいます。有権者は「この道しかない」と思わされ,何をやっても無駄だという無力感を受け入れさせられる。「お前には俺しかいないだろう」というささやきが聞こえるようです」(中野晃一)。

 安倍政権のやっていることは,DV(ドメスティック・バイオレンス)と同じだ,というわけです。ここからはじまるお二人の対談は徐々にその鋭さを増していきます。見出しを拾っておきますと以下のようです。

 「この道しかない」はずはない!
 「政治の新自由主義化」を超えて
 安倍政権のDV的手法
 情念や欲望を煽る政治マーケティング
 新自由主義を覆い隠す国家保守主義の幻影
 新自由主義はもはや自由ではない
 奴隷が漕ぐ「ガレー船」国家
 ポジティブな言葉で人と人とをつないでいく

 読後の強烈な印象となって残っている発言を拾ってみますと,以下のようです。

 「現在の日本をどう表現すればよいかを考えていて,手漕ぎの軍船「ガレー船」を思い浮かべました。ローマ時代には敗(ま)けた国の捕虜が奴隷になって船を漕いだ。
 この日本で,レント階層が自分たちの地位を確保するためには,グローバル経済秩序で勝ち抜かなければならない。そのためには,システムか閉め出されて低賃金で働かされている人びとに日本というガレー船を漕がせて,世界市場に泳ぎ出す。とはいえ,漕ぎ手の奴隷の反乱がいつ起こるかわからず,グローバル経済秩序もいつまでもつかわからない。だからこそ,日米安保体制を強化して日本の軍事化を進めることで,自らが寄生する体制の強化を図ろうとしているのが現状でしょう。でもそれは,必然的に軋轢(あつれき)を生む」(西谷修)。

 「安倍政権の経済政策は,『デフレ脱却』を旗印に,日銀に大量のカネを刷らせ,それによって円安を引き起こし,とにかく輸出企業を助ける。つまり基本的には企業を助ければ経済がよくなるという『トリクルダウン論理』で動いています。これは一般的にはまだ通用力があって,会社が繁栄しなければ給料はもらえず,国が繁栄しなければ生活水準も上がらないと思いこんでいる。しかしこのしくみは,先進国ではなくいわゆる発展途上国が『成長』を体験するときに言えることで,社会の底上げの原資を稼ぐために企業を儲けさせ,国家主導の殖産興業がなされる。
 しかし現在,先進資本主義諸国では経済政策が悪いから成長しないのではなく,成長する余地が資本主義のメカニズムからはもう出てこなくなってしまったわけです。」(西谷修)。

 というような調子で,西谷修×中野晃一対談は,ますます佳境に入っていきます。そして,これまであまり話題にならなかった(少なくとも,大手メディアでは)問題の根源にどんどん切り込んでいきます。読んでいて心地よいくらいです。

 しかし,考えてみれば,このような議論は,ついこの間までテレビや新聞でごくふつうに紹介されていたのに,いまではすっかり陰をひそめています。それどころか,意図的に忌避されています。いま,真っ向からこのような議論を取り上げるメディアは,雑誌では『世界』,新聞では『東京新聞』くらいなものでしょう。あとは「自発的隷従」よろしく権力にすり寄っています。こんな異常事態に突入してしまっているのに,多くの日本人は気づかずにいます。そして,どんどん「戦争のできる国家」をめざしてまっしぐらです。

 もはや,一刻の猶予もない,そういうところに差しかかってきています。そのための答えを探るためのヒントが,この対談にはいくつも盛り込まれています。ぜひ,ご一読いただきたく,お薦めいたします。

 というところで,今日のところはここまで。
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