2015年2月5日木曜日

『Wunderland der Unsterblichkeit』(『不死のワンダーランド』西谷修著のドイツ語版)が刊行されました。

 いまからもう12年も前になるでしょうか。ドイツ・スポーツ大学ケルンの客員教授として半年間,ゼミを担当したことがあります。このときに,ケルン大学の日本語・日本文化研究所のアンドレアス・ニーハウス教授が多くの学生さんを引き連れて,わたしのゼミに参加してくださいました。ニーハウス教授の目的は,日本語・日本文化を学ぶ学生さんたちにネイティーブの日本語の授業を聞かせることにありました。

 これがご縁で,ニーハウス教授と仲良しになりました。かれは若いときに慶応大学に留学し,「嘉納治五郎研究」をテーマにし,のちに,このテーマで学位を取得しています。わたしがお会いしたときにはすでに本になって刊行されていました。もちろんドイツ語で書かれた論文です。「嘉納治五郎」と聞いては黙っているわけにはいきません。早速,読ませてもらいましたが,ところどころ気になる部分がありましたので,そのたびにわたしの感想と考えをかれに伝えました。すると,とても喜んでくれて,改訂版が出るときには訂正・加筆したいと言ってくれました。

 その後,かれが日本にやってきたときに西谷修さんを紹介しました。すると,かれは西谷さんのお仕事に強く興味をいだき,できればドイツ語に翻訳したいという話になりました。そのとき西谷さんからは『不死のワンダーランド』をという提案があり,ニーハウス教授も「ぜひに」ということで話がまとまりました。それから幾星霜,じつに粘り強くかれはこの仕事に取り組みました。それがようやく世にでるというわけです。


その本のフライヤー(上の写真・パソコン画面を撮影)が西谷さん経由でわたしのところにとどきました。感慨無量です。まるで,わたしのことのように嬉しくて,このフライヤーとずーっとにらめっこをしていました。そして,ニーハウス教授のことや美人の奥さん(フランス語の先生)のこと,ドイツ・スポーツ大学ケルンでの半年間のゼミのこと,あるいは,かれの紹介で訪ねた「日本文化センター」でのこと,などいろいろの懐かしい思い出がつぎからつぎへとフラッシュ・バックしてきて,時間の経つのも忘れてしまいました。

 このフライヤーをよくみますと,右上のところに囲みの記事があります。これが,たぶん,刊行される本の表紙になるのではないか,とおもいます。中央には,やや大きな文字で「西谷修」と日本語で書かれています。これはナイス・アイディア。漢字の文字がデザインとしても生きています。ちなみに,ドイツ人は日本語の文字にとても興味をもっている人が多い。夏になって露出が多くなりますと,漢字をタトゥーで入れたドイツ人をよくみかけます。二の腕に「合格祈願」と入れた初老の男性に出会ったときは,おもわず笑ってしまいました。

 ですから,哲学に興味をもつ人であれば,「西谷修」の文字をみて,すぐに日本の哲学者の本だとわかることでしょう。そして,ローマ字ではなく,この漢字で,著者の名前が印象づけられることは素晴らしいことだとおもいます。

 こんど,ニーハウス教授が日本に来られることがありましたら,ぜひ,研究会を開いて「合評会」でもやろうかといまから楽しみです。西谷さんからは,近日中に本がとどくとも聞いています。手にとって感触を楽しみ,あちこちのページをめくって眺め,匂いを嗅いだら,またまた,感動することでしょう。

 西谷さんには,これまで長い間,なにかとお世話になり,いまもなお懇意にさせていただいています。わたしがこんにちあるは西谷さん抜きでは考えられません。わたしにとってはもっとも大事な恩人です。その恩人に,万分の一かの恩返しができたとすれば,こんな嬉しいことはありません。

 ニーハウス教授のお仕事が,わがごとのように嬉しい,という最大の理由がこれです。

 このあとは,ドイツでどのような読まれ方をするのか,大いに期待したいとおもいます。

〔追記〕
 ドイツ・スポーツ大学ケルンで担当したゼミの内容は,『身体論──スポーツ学的アプローチ』(叢文社,2004年)にまとめておきました。ご笑覧いただければ幸いです。
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