2011年3月17日木曜日

精確な情報の開示を,そして,第二のチェルノブイリに至らないよう祈るのみ。

 中日新聞の夕刊(3月16日)には,「レベル6」であるとアメリカの専門家が語っている,という記事がかなり大きく報道された。たぶん,東京新聞にも掲載されたことだろう。
 このアメリカの専門家の発言は,すでに,インターネット上では15日の午後には映像とともに流れていた。それとほとんど同じタイミングで,IAEA(国際原子力機関)の事務局長が「チェルノブイリ以下,スリーマイル島以上」(つまり「レベル6」であるということ)という「現段階での認識」である,ということを記者会見で明らかにしている(詳しくは昨日のブログで触れたとおり)。にもかかわらず,新聞各社はこれをとりあげてはいなかった。もちろん,NHKは一切,この情報には触れていない。しかも,NHKは,某東大教授の口を借りて,「今回の事故はチェルノブイリとはまったく異質のケースである」「そういう心配は無用である」とまで言わせている。この某東大教授が,IAEAの事務局長の発言を知らないはずはない。にもかかわらず,平然と上記のように発言している。
 国際社会は,このIAEAの事務局長の公式発言を軸にして,いろいろの判断や行動を起こしている。だから,外国にいるわたしの友人たちからも,遠く離れろ,というメールがとどく。しかし,国内の新聞もテレビも,このこととはまったく逆のことを言っている。この落差には驚くほかはない。つまり,日本という国家もまた,このような非常事態が起きると明らかに「情報統制」をおこなっている,ということだ。もちろん,その背景には,「混乱を防ぐため」という配慮があることは承知している。しかし,IAEAの認識・判断まで秘匿して,まったく別の認識・判断を提示しつづける,この姿勢には疑問を感じないではいられない。
 こうした流れを見越したかのように,アメリカの政府高官は「日本政府のとっている姿勢を支持する」と発言し,しかも「多くのことを学ばせてもらっている」とまで述べている。そして,この発言については日本の新聞にも大きく報道されている(昨日,夕刊)。しかし,よくよく考えてみれば,「多くのことを学ばせてもらっている」という発言にはいろいろの含みがあるようだ。このことの解釈は,ここではひとまず棚上げにしておく。いずれまた。
 情報が乱れ飛ぶことによる混乱はどんなことがあっても避けなければならない,このことは充分に承知しているつもりである。しかし,都合の悪い情報を秘匿して,楽観的な情報だけを垂れ流しにすることもまた,避けなければならないだろう。少なくとも,IAEAの認識・判断と矛盾しない程度の情報はきちんと開示して,その上でいまとるべき行動はなにか,と国民に提示すべきではないか。もうすでに,政府や東電や保安院の記者会見での発言に不信の念をいだく人は日に日に増えている。その結果,多くの国民が疑心暗鬼になっている。このことの方がどれほど恐ろしいことか。この不信が蔓延してしまうと,もはや,あらゆるコントロールが効かなくなってしまうからだ。これこそが,どんなことがあっても回避しなければならない最悪の事態ではないか。

 一夜明けて,今朝になってネットを流れている外国の情報について少しだけ抜粋。
 ドイツ:成田行き航空機の運行を一時停止。
 イギリス:東京および東京以北に住むイギリス人に対し,そこから退避するよう勧告。インフラ混乱の予想も含めて。
 アメリカ:東北地方に在住のアメリカ人に対して,福島原発から80㎞以上のところに退避するよう勧告。
 ロシア:日本からの渡航者・輸入品に放射能検査を実施。
 海外メディア:一部,撤退。
 プロ野球横浜のアメリカ人選手,一時,帰国。など。
 IAEA事務局長:日本政府の情報開示に苦言。

 こうした情報の混乱する中でも,必死で,原発の大爆発だけは回避しようと,それこそ決死の覚悟で取り組んでくれている人たちがいる。とりわけ,もっとも危険な最先端での業務に従事しているくれている人たちにはほんとうに頭が下がる。こういう人たちがいてくれるお蔭で,わたしたちがその恩恵に浴することができるのだ,ということを夢忘るることなかれ。
 とにもかくにも,原発の大爆発だけは回避しなければならない。そして,第二のチェルノブイリに至らないことを,これは全世界の願いでもあるだろう。制御不能となってしまった原発が,なんとしてでも無事に収束してくれるよう,ひたすら祈るのみである。
 科学には限界がある。その限界を越えたさきにあるもの,それは「祈り」しかないのだ。最後には,人間は祈りに救いを求めるしか方法はないのだ。このこともまた,今回の巨大な災害が教えてくれた貴重な教訓である。 

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