2013年4月4日木曜日

蒼国来関,おめでとう。冤罪晴れて「春」到来。名古屋場所から復帰。

 それにしてもこの2年間は長かったに違いない。27歳から29歳といえば,力士生命のかかった心身ともにもっとも充実する年齢だ。蒼い国,中国・内モンゴルからやってきた若者は,長い時間をかけてこつこつと稽古を重ね,前頭15枚目まで地位をあげてきた矢先のできごとだった。さあ,これからだ,と気合が入ったそのときに,身に覚えのない「八百長」問題に巻き込まれ,薮から棒の「冤罪」がかぶさってきた。

 本名・恩和図布新(おんわとうふしん)。最初から最後まで「無実」を主張しとおしてきた。しかし,日本相撲協会の特別調査委員会は,親方,力士計25人の八百長関与を認定し,引退勧告などの処分で事実上追放した。そのなかに蒼国来関も巻き込まれてしまっていた。なんとしても納得できない蒼国来関は「幕内力士としての地位確認の訴訟」を起こした。

 それから2年を経過して,ようやく「無実」が認められた。日本相撲協会は昨日(3日)に臨時理事会を開催して,東京地裁の判決について,控訴しないことを決定。そうして,名古屋場所(7月7日初日)から,除名されたときの地位である前頭15枚目で復帰することになった。

 日本相撲協会理事長は臨時理事会後に,親方(指導責任を問われ降格処分を受けていた)と蒼国来関に会って,こころの籠もった詫びを入れて和解が成立したという。そして,蒼国来関は「明日からまわしをつけて稽古する」ときっぱり。力士としては4月27日の横綱審議委員会稽古場総見から協会の行事に参加することになる。

 世の中に「冤罪」ほど罪深いものはない,とわたしはずっと長い間,そして,いまも考えている。なぜなら,わたし自身もこれまで何回「冤罪」を被せられてきたことか,そして,そのつど名誉棄損で裁判を起こそうと真剣に考えたことがあるからだ。しかし,わたしの場合には,職業上の身分を剥奪されるような「冤罪」ではなかったので,黙って我慢することにした。裁判を起こすだけのエネルギーがあったら,そのエネルギーを「研究」に向けるべきだ,というわたしのこころの奥底の声にしたがった。そうして,いまを生きている。その結果が,どう判断されるかは,墓場に入るときに決まる。そして,その事実はかならず明らかになる,と信じて。

 蒼国来関にとってのこの2年間は,力士生命を棒に振るほどの,あまりにも大きなブランクだ。でも,信念の人,蒼国来関ならそのブランクをものともせずに克服してくれるだろう。そして,あの右四つからの投げを「復活」させて,元気な姿を土俵の上で見せつけてほしい。それだけが力士としての名誉挽回のための唯一の方法なのだから。端正な顔だちに闘志が漲ったときの,あの迫力ある顔をとりもどしてほしい。

 これまで以上の支援者やファンが増えることは間違いない。あなたの生きる姿勢に感動した相撲ファンは少なくない。その人たちの声援を背に受けて,大活躍をしてほしい。わたしもそのひとりとして声援を送りたい。

 それにしても,あの,あまりに「拙速な解雇処分」はいったいなんだったのか。あの,特別調査委員会のくだした結論はいったいなんだったのか。その責任の重さを徹底的に追及してほしい。これから「検証」が行われるというが,内部「検証」だけでいいのか。この人たちの言い分を聞いていると,これまた腹が立ってくる。(詳細は省略する)。

 政府自民党も,原子力規制委員会も,全柔連の理事会も,教育委員会も,どこもかしこもみんな「無責任」。日本相撲協会も同じ。この体質を改善しないことには,日本の未来はない。情けないが,これが現状だ。

 中国・内モンゴルから大志を抱いてはるばるやってきた恩和図布新(おんわとうふしん)さん,すなわち,蒼国来関に,「冤罪」を被せてしまったこと,わたしもひとりの日本人としてこころからお詫びをしたい。そして,これからはもっともっと応援したいと思っていますので,心機一転,頑張ってほしい。あなたなら「できる」と信じて,エールを送ります。なんと言ったって,わたしの敬愛する日馬富士と同じように「正しく生きる」ことを貫いた人なのだから。

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