2013年5月21日火曜日

稀勢の里,鶴竜が元気で大相撲が面白い。いよいよ終盤戦。☆の潰し合いがはじまる。

 全然駄目だった日馬富士の相撲がもどってきました。あの低い立ち合いから,突き上げるようなのど輪がでるようになれば,あとは変幻自在。スピードに乗って,いかようにも相撲をとることができます。当初,おもったよりは足首の状態は悪くなさそうなので(でも,いくらかかばっているのがみえる),このまま白鵬戦に向けて突き進んでいってほしい。そして,大きな波乱を呼び起こしてほしい。大相撲のためにも。そして,日馬富士のためにも。

 それよりも,今場所は,稀勢の里,鶴竜のふたりの大関がともに元気。やはり,大関が元気な場所は盛り上がります。この二人が横綱と対戦する一番は,これまでにない見どころになりました。調子のいいときの大関には,それまでとはまた違った新しい戦略が飛び出してくる確率も高くなってきますので,そのあたりのことも楽しみのひとつです。

 さて,閑話休題。稀勢の里が,ようやく,自分の相撲の型ができつつあります。この型を,この場所,最後まで貫くことができるかどうか,そこが大きな天王山となります。どこか,北の湖が絶好調だったころの相撲に似たところがあって,土俵際は腹で押し出す,そういうパターンが多くでてくるようになると面白くなります。課題だった左からの攻撃が今場所は安定しています。これまでのように,一気に左から攻撃を仕掛けるのではなくて,相手のいやがるように左からじわじわと攻めたてると,相手の上体が起きてきますので,そうなればあとは持ち前の体力とあの腹で寄り切れいい。勝ったときのにくたらしい表情も,北の湖とよく似てきました。でも,やや上体が起きている姿勢が気になります。下位の力士にはあれで通用するものの(むしろ,取りこぼしがなくて安全),上位の横綱にはあれでは通用しないとおもいます。大関同士の対決でも危ないかもしれません。そのときに,どのような秘策をもっているかどうか,そこが,こんごの終盤戦の鍵となるでしょう。

 もうひとりの大関・鶴竜の取り口がいつになくいい。大関に上がってきたころの相撲です。今日は,少し早く立ちすぎて,重心が上に上がってしまいました。そこを突かれて下から持ち上げられるようにして,寄り切られてしまいました。やはり,勝ち急いだのでしょうか。立ち合いで,一呼吸,遅れるくらいの方が相手の重心の下に入ることができます。いわゆる「後の先」です。鶴竜がこの立ち合いの呼吸を完全にマスターしたとき,横綱がみえてくるでしょう。かれが大関に昇進したときの口上が素晴らしかったことを,なぜか,強烈に記憶しています。なので,「この男,ただ者ではない」と,このブログにも書きました。詳しくは,そちらのブログで確認してみてください。

 相撲界には「心技体」ということばがあります。大関以上の地位に上がっていく,最後の決め手は「心」にあるようです。技も体も申し分ないのに,どうしても取りこぼしがおおい力士にいえることは「心」の軽さです。どんなに不利な体勢になっても諦めない強い「心」が必要です。その日,一番の勝負に全力を傾けることのできる集中力と,勝負が長くなって呼吸が苦しくなっても諦めない持続力,この二つが求められます。そこが大関・横綱とそれ以下の力士との大きな違いでしょう。じつは,ここに大きなハードルがあるようにおもいます。もっと言ってしまえば,大関と横綱の間にはもっともっと大きなハードルがあります。そこをいかにして通過するか。ですから,横綱になるような男はどこかできが違います。

 日馬富士も,狂っていた相撲勘をとりもどし,以前のような勢いがでてきました。この終盤戦で,だれが白鵬に土をつけるか,楽しみになってきました。今場所の白鵬にはスキがありません。絶好調です。しかし,こういうスキのない場所ほど,意外なところに落とし穴が待っているものです。そのためには,白鵬を慌てさせるような秘策を練って土俵に上がる力士がでてくることです。これからさきの横綱・大関の取り組みは,すべて見逃すことはできません。ここをどのように耐えて,凌ぎきるか,そこが勝負の分かれ目となります。

 今日からの終盤戦,目が離せません。
 今場所の稀勢の里,鶴竜,日馬富士,そして,白鵬。みんな勝たせてやりたい。しかし,そうはいかないところが相撲の厳しさです。その厳しさを耐え抜く「力」,それが問われます。力士といわれる所以はこんなところにもありそうです。力士のもつ「力」。それが今場所はどのように表出しているか,じっくりと終盤戦では楽しみたいとおもいます。

 頑張れ,4力士。自分の型を貫き通せ。型と型との激突。それをファンは待っているのです。わたしもそのひとりです。千秋楽に笑うのはだれか。そのために今日がある。それいけ,ワッセイ。

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