2014年6月10日火曜日

『これでわかった!〔超訳〕特定秘密保護法』(明日の自由を守る若手弁護士の会著,岩波書店,2014年6月5日刊)を読む。

 書店に並ぶ数日前にとどく雑誌『世界』(岩波書店,定期購読)の編集後記(編集長・清宮美稚子執筆)を読んでいたら,その末尾に面白い文章をみつけました。引用しておきましょう。

 「・・・とりわけ理解しにくい「特定秘密保護法」の文章(しばしば条文だけでは完結せず,参照項目が入れ子状態になっているところもあり,読んでいて頭が痛くなる)を,万人にわかりやすい日本語に翻訳してくれたのだ(小社刊『これでわかった!超訳 特定秘密保護法』)。たとえば第25条。

 ≪第二十三条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し,教唆し,又は煽動した者は,五年以下の懲役に処する≫(原文)→≪「秘密」を知ろうとして何人かで相談した人(共謀),「秘密」を漏らすように働きかけた人(共謀),「秘密」を漏らすように働きかけた人(教唆),「秘密」を漏らすようにあおった人(煽動)は,最大で五年間刑務所にはいってもらいます≫(超訳)。

 わざとわかりにくくしたとしか思えないような条文を,もののみごとにわたしたちの日常のことばに置き換え,単純明解に提示してくれた〔超訳〕の素晴らしさに感動すら覚えてしまいました。

 この法案の全文が新聞に掲載されたとき,これだけはなんとしても読んでおかなくてはと思い,何時間もかけて赤線を入れながら苦労して読んだ経験のあるわたしは(このことはブログにも書きました),編集長の清宮さんですら「頭が痛くなる」文章だと知り,少し救われました。しかし,苦労して読んだわりには,理解の方はいまひとつでした。ですから,この難解な条文を「超訳」によってわかりやすくしてくれたと知り,書店に走りました。

 そして,わたしの一番知りたかったこと,特定秘密とはどういうもののことをいうのか(第2章 特定秘密の指定等 の第3条 特定秘密の指定),というところから読みはじめました。そうしたら,なんだ,こんなかんたんなことだったのか,とこれまたびっくりでした。ので,そこのところがどのように〔超訳〕されているか,引いておきましょう。

 まずは,条文の方から。

 (特定指定の秘密)
 第三条 行政機関の長(当該行政機関が合議制の機関である場合にあっては当該行政機関をいい,前条第四号及び第五号の政令で定める機関(合議制の機関を除く。)にあってはその機関ごとに政令で定める者をいう。第十一条第一号を除き,以下同じ。)は,当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であっな,公になっていないもののうち,その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため,特に秘匿することが必要であるもの(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法(昭和二十九年法律百六十六号)第一条第三項に規定する特別防衛秘密に該当するものを除く。)を特定秘密として指定するものとする。ただし,内閣総理大臣が第十八条第二項に規定する者の意見を聴いて政令で定める行政機関の長については,この限りではない。

 この条文の〔超訳〕は以下のとおりです。

 (特定秘密の指定)
 第3条
 1項
 大臣とか(注1)は,その官庁がやる仕事に関係する情報の中で,下のようなA・B・Cのすべての条件が揃っているものを「特定秘密」(これ以降は,この「特定秘密」のことを「秘密」といいます)として指定します。
 A 別表であげた「外交」「防衛」「スパイっぽい活動防止」(注2)「テロ防止」(注3)に関係する情報
            +
 B 一般に公開されていないもの
            +
 C それが漏れちゃうと日本の安全保障に大打撃があるから特に秘密にしなきゃいけないっていうもの
 ただし,総理大臣が,専門家の意見を聴いて(「情報保全諮問会議」を開きます),各大臣との話し合いで決めた「秘密」についての基準で,ここの官庁に「秘密」って指定させる必要ないんじゃないの? となっていれば,その官庁の大臣とかは「秘密」を指定することはできません。

 以上です。なんとすっきりすることでしょう。こんな風に〔超訳〕できるのであれば,正式の条文ももう少しわかりやすく書くことはできるはずです。でも,法律というものの性質上,厳密な表現を求められることを考えれば,そして,長年の慣行にしたがえば,そこから抜け出すことは容易ではないのかもしれません。それにしても,正式の条文の方は,どう考えても国民には理解不能の表現になるように,意図的・計画的に仕組んであるのではないかと思わざるを得ません。

 まあ,そうした議論はともかくとして,「特定秘密保護法」をかくもわかりやすく〔超訳〕してくれた本書は,わたしにとってはまことにありがたいプレゼントでした。同時に,この本を読んでいくにつれて,なんと恐ろしい法律を仕組んだものかと空恐ろしくなってしまいます。わたしたちの日常の会話ですら,あるいは,噂話ですら,刑務所行きの犯罪とされかねません。わたしのこのブログだって,いともかんたんに「教唆」「煽動」の罪に問われ,最大5年間,刑務所行き,なんてこともありうるとなると,とてもとても他人事では済まされません。

 あな,恐ろしや,恐ろしや・・・・・。
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