2014年6月18日水曜日

太極拳の呼吸法は逆呼吸です。李自力老師語録・その46.

 一般的に呼吸法には順呼吸と逆呼吸のふたとおりの方法がよく知られています。順呼吸は,いわゆる腹式呼吸のことで,吸い込んだ吸気を丹田にため込んでいき,いっぱいになったところでそれを吐き出します。逆呼吸は,文字通りその逆で,吸い込んだ吸気を丹田よりも上のところにため込んでおき,それを吐き出すときに丹田をふくらませていきます。つまり吸気のときに丹田をへこませて,呼気のときに丹田をふくらませる,というわけです。

 なぜ,太極拳はこの逆呼吸をするのか。その理由は以下のとおりです。

 太極拳は,断るまでもなく,武術です。武術は技を仕掛けたり,力を出すときには丹田の力が必要です。ですから,技を仕掛ける前の段階で吸気を行いながら,丹田を空っぽにしていき,技を仕掛けるときに呼気とともに一気に丹田に力を籠めます。そして,切れ味の鋭い技が繰り出されるという次第です。

 しかし,24式のようなゆったりとした動作で行う太極拳の場合には,この吸気と呼気を,その動作に合わせてゆっくりと行います。24式の動作も,必ず,技を仕掛ける前の段階の準備局面と直接技を繰り出す主要局面とが交互に組み合わさっています。ですから,この動作に合わせて吸気と呼気をゆっくりと行うことになります。

 この際に重要なことは全身の力をできるだけ抜いてリラックスさせることです。からだの無駄な力みが抜けないとこの逆呼吸をスムーズに行うことはできません。ですから,逆呼吸を身につける前提は「脱力」です。ということは,筋肉の力を頼りに動作を行うのではなく,意識(イメージ)に導かれるようにして動作を行うことが重要になってきます。

 このようにして逆呼吸を身につけると,太極拳の動作が一変します。

 動作全体が大きくみえるようになると同時に,動作のメリハリがはっきりしてきます。つまり,吸気のときの動作と呼気のときの動作のメリハリです。すなわち,技の切れ味です。ゆったりとした動作なのに,力強さが浮き彫りになってきます。これが武術である太極拳の本来の動作である,というわけです。

 如是我聞。

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