横綱白鵬の周辺に暗雲が漂いはじめた。しかも,その報道のされ方が,いつもながら不愉快だ。「親方に無断で,一門の合同稽古をサボった」という見出しに,無意識の作為が感じられるからだ。この構造は,朝青龍のときと同じだ。つまり,いきなり犯罪者扱いにするジャーナリズムのお粗末さ。しかも,その陰には「モンゴル人排除」というゼノフォビア,料簡の狭い,悪しきナショナリズムがちらつく。ジャーナリズムの責任のかけらも感じられない低俗ぶり。記者の能力不足,レベルの低下現象。
この手の報道は,よほど注意して,十分に取材した上でバランスのとれた情報を提供しないと,読者はすぐに洗脳されてしまう。わたしは,明らかにジャーナリズムによる白鵬バッシングがはじまった,と受け止めている。朝青龍と同じで,お前の役割は終った,だから,そろそろ消えてもらおうか。あとは稀勢の里らに道をゆずってもらおう,とでもいったような・・・・。まるで,モンゴル出身力士に大横綱になられては困る,しかも,大記録をづくられては困る,とでもおもっているかのように。
またぞろ,朝青龍の二の舞か,と。
結論から言っておこう。今回の騒動の根源にある問題は,親方の力量不足。横綱を指導・助言するだけの力量,すなわち,人格・見識を欠いている。ただ,それだけ。横綱の品格を問う以前に,親方の品格を問うべし。大相撲で起きている諸悪の根源はすべてここに端を発している,と言って過言ではない。朝青龍のときも,親方の品格はまったく無視された。テレビに映し出されている姿だけでも,親方としての資質が問われる,なんとも情けないものだったのに・・・・。
「無断」とは,どういうことか。なにゆえに「無断」ということが起きるのか。
今回は,親方が横綱に声をかけることができなくなってしまう,つまり,会話が成立しなくなってしまう,なんらかの理由があったはず。そこのところを解きほぐすような報道をしてほしい。それがないために,「無断」ですべてを片づけ,横綱だけが「悪」になってしまう。
少しだけ,解説をしておこう。
親方が「当然,ここにくるものと思っていた」ということは,親方が白鵬には声をかけていなかった,ということ。少なくとも「明日は一門の合同稽古だ。一門の隆盛のために気合を入れて頑張ろう」くらいのことは,どんなに険悪な関係になっていたとしても言わなくてはならない最低限のボーダーラインだ。それを黙っていてもくるのが当然という,そん程度の認識しかない親方の感覚がおかしい。良好な関係が維持されているときは,なにも言わなくてもくるのが当たり前。そうでないときこそ,きちんとけじめをつけておかなくてはなるまい。
じつは,宮城野親方(元竹葉山)と白鵬の師弟関係は周囲もうらやむほどの良さで,ここまでやってきた。そこに亀裂が入ったのだ。つまり,この二人が,大阪場所の期間中に,考え方の違いから,おそらく初めて真っ正面からぶつかり,大喧嘩になったというのだ。ことの真相は味加減があってむつかしいが,伝え聞く話は以下のようである。
立浪一門の大島部屋の親方(元旭国)がこの5月で定年退職となる。大島部屋には旭天鵬と旭秀鵬という二人のモンゴル出身の力士がいる。旭天鵬は白鵬の土俵入のときの露払いをつとめる大の仲良しだ。だから,もし,大島部屋の後継者がいなくて,部屋を閉めるということになれば,白鵬のいる宮城野部屋にくればいい,と二人は暗黙のうちに了解していたらしい。そして,そのとおりにことは進展していった。ところが,宮城野親方は,大島部屋を吸収合併する話を断ってしまった,というのである。白鵬としては,せっかく宮城野部屋が大きくなるチャンスなのに,なぜ,断ってしまったのか納得がいかない。宮城野部屋は小さな所帯で,白鵬の稽古相手にも事欠くほどだった。だから,白鵬は,いつもほかの部屋に出稽古にいかなくてはならなかった。旭天鵬らが入ってくれば,自分の部屋で稽古ができる。そんなことは宮城野親方だってとことん承知のはず。なのに・・・・。ここが発端。その前に,すでに,とんでもない伏線があった・・・とわたしは推測している。
しかも,こちらの真相はもっともっと根が深いようだ。
そもそも大島部屋の吸収合併を,なぜ,宮城野親方が断ってしまったのか。その結果,大島部屋の力士たちは友綱部屋に引き取られることになった。その友綱部屋も,立浪一門の連合稽古を「部屋の都合」という理由で参加していない。その友綱部屋に,白鵬は稽古に出向いたのだ。なぜか? これは白鵬の意思表明であり,明らかな造反である。が,賢い白鵬は「連合稽古は関取が少ないと聞き,より元気のある力士と稽古したかった。一日一日を大事にしたいので」と弁明している(4月29日の『東京新聞』)。
もう一歩踏み込んでおこう。この1月に行われた理事選挙で,一門のリーダー格である立浪親方(元旭豊)が造反を起こして貴乃花親方に一票を投じたのだ。その結果,それまで理事だった友綱親方が一票差で落選してしまった。その責任をとって,一門を離脱する覚悟だと立浪親方は宣言している。しかし,それを認めてしまっては立浪一門が総崩れを起こしかねないので,そのままになっている。その状態での,一門の連合稽古だというのである。ということは,立浪一門のなかに,すでに,長年にわたってなにかがくすぶっていた,ということだ。
そんな形式的な(つまり,立浪一門の結束のための)連合稽古よりは,実のある稽古のできる友綱部屋の稽古を選んだ,というのが白鵬の表面上のいいわけである。これまでもそうして,あちこちの部屋に出稽古にでかけてきたのだ。ましてや,白鵬にとっては,こんな険悪な雰囲気が漂う連合稽古に参加するよりは,気心の知れた旭天鵬らと稽古をした方が,そして,実力のある力士たちと稽古をした方が,ずっといいに決まっている。
このあたりで,このブログは一旦,終わりにしておこう。なぜなら,貴乃花親方を中心とした勢力再編が,いま,大相撲の世界で進行中であること,そして,そのことと白鵬は微妙な関係にあること,おまけに,白鵬引退後の勢力地図も描かれつつあること,などなど,話題はつきないからだ。
いずれにしても,こんにちの大相撲はモンゴル出身力士たちの貢献なしには考えられないということを,よもや,メディアの人びとは忘れてはいまい。だとしたら,それ相応の情報の流し方をするのが,マナーというものではないのか。少なくとも,表面の,ほんの一部を針小棒大にして報道することだけはやめてほしい。でないと,大いなる誤解を招き,朝青龍のように引退に追い込まれるような悲劇があとを絶たなくなってしまう。
白鵬も,すでに,そのターゲットになりつつある。とても,いやな予感ではあるが・・・・。
ソクラテスも,イエス・キリストも,ガリレオ・ガリレイも,みんな無責任な表層を流れる根も葉もない「うわさ」の犠牲者だったことを,想起すべきだろう。こんにちのメディアが,その役割を担いつつあることも,まぎれもない事実なのだから。
白鵬に朝青龍の二の舞をさせてはいけない。断じていけない。熱烈な大相撲ファンのひとりとして,それだけは断じて許さない。二度も同じ愚を犯してはならない。
この手の報道は,よほど注意して,十分に取材した上でバランスのとれた情報を提供しないと,読者はすぐに洗脳されてしまう。わたしは,明らかにジャーナリズムによる白鵬バッシングがはじまった,と受け止めている。朝青龍と同じで,お前の役割は終った,だから,そろそろ消えてもらおうか。あとは稀勢の里らに道をゆずってもらおう,とでもいったような・・・・。まるで,モンゴル出身力士に大横綱になられては困る,しかも,大記録をづくられては困る,とでもおもっているかのように。
またぞろ,朝青龍の二の舞か,と。
結論から言っておこう。今回の騒動の根源にある問題は,親方の力量不足。横綱を指導・助言するだけの力量,すなわち,人格・見識を欠いている。ただ,それだけ。横綱の品格を問う以前に,親方の品格を問うべし。大相撲で起きている諸悪の根源はすべてここに端を発している,と言って過言ではない。朝青龍のときも,親方の品格はまったく無視された。テレビに映し出されている姿だけでも,親方としての資質が問われる,なんとも情けないものだったのに・・・・。
「無断」とは,どういうことか。なにゆえに「無断」ということが起きるのか。
今回は,親方が横綱に声をかけることができなくなってしまう,つまり,会話が成立しなくなってしまう,なんらかの理由があったはず。そこのところを解きほぐすような報道をしてほしい。それがないために,「無断」ですべてを片づけ,横綱だけが「悪」になってしまう。
少しだけ,解説をしておこう。
親方が「当然,ここにくるものと思っていた」ということは,親方が白鵬には声をかけていなかった,ということ。少なくとも「明日は一門の合同稽古だ。一門の隆盛のために気合を入れて頑張ろう」くらいのことは,どんなに険悪な関係になっていたとしても言わなくてはならない最低限のボーダーラインだ。それを黙っていてもくるのが当然という,そん程度の認識しかない親方の感覚がおかしい。良好な関係が維持されているときは,なにも言わなくてもくるのが当たり前。そうでないときこそ,きちんとけじめをつけておかなくてはなるまい。
じつは,宮城野親方(元竹葉山)と白鵬の師弟関係は周囲もうらやむほどの良さで,ここまでやってきた。そこに亀裂が入ったのだ。つまり,この二人が,大阪場所の期間中に,考え方の違いから,おそらく初めて真っ正面からぶつかり,大喧嘩になったというのだ。ことの真相は味加減があってむつかしいが,伝え聞く話は以下のようである。
立浪一門の大島部屋の親方(元旭国)がこの5月で定年退職となる。大島部屋には旭天鵬と旭秀鵬という二人のモンゴル出身の力士がいる。旭天鵬は白鵬の土俵入のときの露払いをつとめる大の仲良しだ。だから,もし,大島部屋の後継者がいなくて,部屋を閉めるということになれば,白鵬のいる宮城野部屋にくればいい,と二人は暗黙のうちに了解していたらしい。そして,そのとおりにことは進展していった。ところが,宮城野親方は,大島部屋を吸収合併する話を断ってしまった,というのである。白鵬としては,せっかく宮城野部屋が大きくなるチャンスなのに,なぜ,断ってしまったのか納得がいかない。宮城野部屋は小さな所帯で,白鵬の稽古相手にも事欠くほどだった。だから,白鵬は,いつもほかの部屋に出稽古にいかなくてはならなかった。旭天鵬らが入ってくれば,自分の部屋で稽古ができる。そんなことは宮城野親方だってとことん承知のはず。なのに・・・・。ここが発端。その前に,すでに,とんでもない伏線があった・・・とわたしは推測している。
しかも,こちらの真相はもっともっと根が深いようだ。
そもそも大島部屋の吸収合併を,なぜ,宮城野親方が断ってしまったのか。その結果,大島部屋の力士たちは友綱部屋に引き取られることになった。その友綱部屋も,立浪一門の連合稽古を「部屋の都合」という理由で参加していない。その友綱部屋に,白鵬は稽古に出向いたのだ。なぜか? これは白鵬の意思表明であり,明らかな造反である。が,賢い白鵬は「連合稽古は関取が少ないと聞き,より元気のある力士と稽古したかった。一日一日を大事にしたいので」と弁明している(4月29日の『東京新聞』)。
もう一歩踏み込んでおこう。この1月に行われた理事選挙で,一門のリーダー格である立浪親方(元旭豊)が造反を起こして貴乃花親方に一票を投じたのだ。その結果,それまで理事だった友綱親方が一票差で落選してしまった。その責任をとって,一門を離脱する覚悟だと立浪親方は宣言している。しかし,それを認めてしまっては立浪一門が総崩れを起こしかねないので,そのままになっている。その状態での,一門の連合稽古だというのである。ということは,立浪一門のなかに,すでに,長年にわたってなにかがくすぶっていた,ということだ。
そんな形式的な(つまり,立浪一門の結束のための)連合稽古よりは,実のある稽古のできる友綱部屋の稽古を選んだ,というのが白鵬の表面上のいいわけである。これまでもそうして,あちこちの部屋に出稽古にでかけてきたのだ。ましてや,白鵬にとっては,こんな険悪な雰囲気が漂う連合稽古に参加するよりは,気心の知れた旭天鵬らと稽古をした方が,そして,実力のある力士たちと稽古をした方が,ずっといいに決まっている。
このあたりで,このブログは一旦,終わりにしておこう。なぜなら,貴乃花親方を中心とした勢力再編が,いま,大相撲の世界で進行中であること,そして,そのことと白鵬は微妙な関係にあること,おまけに,白鵬引退後の勢力地図も描かれつつあること,などなど,話題はつきないからだ。
いずれにしても,こんにちの大相撲はモンゴル出身力士たちの貢献なしには考えられないということを,よもや,メディアの人びとは忘れてはいまい。だとしたら,それ相応の情報の流し方をするのが,マナーというものではないのか。少なくとも,表面の,ほんの一部を針小棒大にして報道することだけはやめてほしい。でないと,大いなる誤解を招き,朝青龍のように引退に追い込まれるような悲劇があとを絶たなくなってしまう。
白鵬も,すでに,そのターゲットになりつつある。とても,いやな予感ではあるが・・・・。
ソクラテスも,イエス・キリストも,ガリレオ・ガリレイも,みんな無責任な表層を流れる根も葉もない「うわさ」の犠牲者だったことを,想起すべきだろう。こんにちのメディアが,その役割を担いつつあることも,まぎれもない事実なのだから。
白鵬に朝青龍の二の舞をさせてはいけない。断じていけない。熱烈な大相撲ファンのひとりとして,それだけは断じて許さない。二度も同じ愚を犯してはならない。
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