2013年8月29日木曜日

斎藤美奈子さんのコラム(原発は)「壊れたトイレ」論に拍手喝采。この人の感性は素晴らしい。

 文芸評論家としての斎藤美奈子さんのお仕事は,かなり以前から注目してきました。言ってしまえば隠れファンのひとりでした。が,最近になって『東京新聞』の「本音のコラム」に登場するようになり,週に一回の担当が待ち遠しいほどのファンになってしまいました。わずか「550字」余のスペースしかない枠組みをフル活用して,みごとなまでの小宇宙(斎藤美奈子ワールド)を演出してしまうその才能・感性に拍手喝采です。

 昨日(8月28日)の『東京新聞』の「本音のコラム」に「壊れたトイレ」と題して,つぎのようなエッセイを書いていらっしゃいます。短い文章ですので,そのまま引用させていただきます。それは以下のとおりです。

 先日,水洗トイレにトイレットペーパーの芯を流すという失態をやらかした。あっと思ったときは後の祭り。二十分ほど格闘するも,異物がつかえて水が流れない。
 次の手を思案しつつ思い出したのが「原発はトイレのないマンション」という言葉である。使用済み核燃料の最終処分場も決まらないまま稼働する原発を皮肉った表現だけれど「トイレがない」は実感に欠ける。怖いのは壊れたトイレだ。
 レベル3(重大な異常事象)の認定が検討中の今の福島第一原発は壊れたトイレに近い。汚水が便器からあふれ出し,バケツを集めて次々ためるもバケツも破損。汚水は床にたまり,トイレの外に侵出し,このままだと家中の床はおろか玄関から外に出て隣家にも影響しかねぬ状況だ。
 それなのに,この家の主は「うちで五輪を開こうぜ」などとはしゃいでいる。私には壊れたトイレを放置して,友人をパーティに招こうとしているように見える。まともな友人なら「順番が違う」と思うだろう。
 汚染水漏れは「五輪に直接関係しない」と語った猪瀬直樹東京都知事。同じく「影響はない」と述べた菅義偉官房長官。このセンスが事態を悪化させる。私は五輪を歓迎しない。「お手上げなんだ。助けてほしい」と首相は他国に頭を下げるべきなのだ。官邸のトイレにトイペの芯を流しに行きたい。

 まあ,プロとはいえ,みごとなまでに余分なことばを削ぎ落とし,斎藤美奈子さん独特の感性の冴えに支えられながら,ど真ん中直球勝負を挑んだ,このコラムには文句なしにこころからの敬意を表したいとおもいます。

 たぶん,『中日新聞』にも掲載されているかとおもいますが,その他の新聞購読者はこの素晴らしい斎藤美奈子さんの「コラム」を読むことができないはずですので,あえて,ここに転載してみました。大手のメジャーな新聞各社も,ここにきて原発問題に関してはかなり軌道修正をしてきていると聞いていますが,まだまだ『東京新聞』の路線にはほど遠いとおもっています。ですから,斎藤美奈子さんのようなコラムニストを登用するところまではいたっていないはずです。『東京新聞』に乗り換えてよかった,としみじみおもっています。

 まあ,そんなことはともかくとして,わたしがこれまで何回も何回も「原発の後始末もできない国がオリンピックを招致するなんて,本末転倒である」とさまざまにヴァージョンを変えて論じてきたつもりですが,この斎藤美奈子さんのわずか「550字」にはとてもかないません。早く,このような文章が書けるようになりたい,と羨望してしまいます。

 いずれにしても,お客さまをお迎えするには自宅の壊れたトイレを直してからという小学生にもわかる理屈から再出発するしかありません。にもかかわらず,「見て見ぬ」ふりをし,詭弁・虚言を弄して再稼働に踏み切ろうとする,もはや,狂気としかいいようのない日本のリーダーたちの言動があとを断ちません。しかも,そんな言動に幻惑されてしまって尻尾をふって追随する「思考停止」の国民が「多数」を占めるかぎり,もはや救いようがありません。

 のみならず,国際社会からも孤立すること間違いなしです。
 そうではなくて,「お手上げなんだ。助けてほしい」という謙虚な素直さが,いま,求められているとわたしも同感です。これが国際社会に対する「誠意」というものでしょう。
 なのに,憲法を改定して再軍備も辞さず,などと意気込んでいる日本政府の姿勢を,世界中の国々が呆気にとられ,きわめて危険な政権として距離をとりはじめています。麻生副総理の「ナチス発言」は取り消したとはいえ,一端,口からでてしまったホンネ?はだれも忘れはしません。この政権は,戦後日本の歴代内閣のなかでも,もっとも危険だ,とアメリカですら身構えはじめているという情報が日毎に多くなってきています。

 かくなる上は,わたしたち一人ひとりが,もう一度,虚心坦懐に,いま,わたしたちはどこから手をつけ,出直さなくてはならないのか,その優先順位をしっかりと見極めないといけない,とわたしは本気で考えています。

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