2010年12月1日水曜日

友あり,遠方より来りぬ。上海大学社会学部教授陸小聰氏。

 しばらく前に,太極拳の李老師から電話で,陸小聰さんが日本にきていて,逢いたいと言っている,という知らせがあった。その数分後には,陸さんから直接,電話が入ってきた。大きな声だったので,瞬時にして,あっ,絶好調だ,と判断した。久しく会っていないが,元気な人に会えるのは嬉しい。すぐに,会う日時を約束した。
 日本人も同じだが,中国人にもいろいろの人がいる。概して,自己主張が強く,妥協するということを好まない,というのが一般的な印象だ。しかし,わたしは職業柄,かなり多くの中国人と接してきたが,運が良く,とても柔軟性のある人が多かった。しかも,それぞれのスポーツ競技での一流選手が多かった。この人たちはどこか抜け出たところがあって,とてものびのびとしているし,自由の許容範囲が広い。それでいて我慢強いし,ひそやかな努力家でもある。
 太極拳の李老師はその代表的な人のひとりである。この李老師よりも先輩にあたる陸さんもたいへんな努力家である。この二人はとても仲がよい。李さんは太極拳の,そして,陸さんは卓球のプロとして子供のころから活躍していた。だから,子供のころから中国全土をくまなくまわって,その技を披露してきた。ので,中国ではきわめて有名な人たちである。この人たちが,ご縁があって,二人とも,わたしのところで博士論文を書き,博士取得者となった。激しい情熱を内に込めつつも,表面ではいつもニコニコと笑顔で,とてもソフトに他者と対応する。安心して会話を楽しむことができる。だから,わたしはこのお二人が大好きである。ともに立派な人格者であるから。
 ここでは李老師のことは,ひとまず措いておくとして,話題の中心は陸小聰さんである。
 陸小聰さんとは久しぶりに会ったので,その間のギャップを埋めるのに,お互いに必死である。話したいことが山ほどあって,お互いに話があちこちに飛ぶ。まるでまとまりのない話が断続的につづく。そして,あっという間に2時間,3時間が過ぎていく。気がついたら,まとまった話はなにひとつしていなかった。しまった,と思ったがあとの祭りである。
 陸さんは,ヨーロッパに出かけて行って,国際学会(スポーツ社会学)で発表をして,その帰路,日本に立ち寄ったという。娘さんが,国費留学で慶応大学に1年間の予定で在籍しているので,ついでに逢いにきた,とも。もちろん,かれの日本の知己にも会いたくて,万難を排してやってきたのだが・・・・。わたしもその中のひとりというわけだ。
 いろいろの話をしたけれども,印象に残った話をいくつか整理しておきたい。ひとつは,来年9月に中国で逢いましょう,という約束。陸さんは,来年4月から10月まで,イギリスに国費で留学する予定になっている。が,ならば,9月上旬には戻るように日程を前倒しにして,変更する,という。そんなことできるの?と聞くと,なんとかなる,という。よし,それでは決定だ。われわれの日程は,9月の18日から25日まで。その間に,北京,上海,昆明(雲南省)をまわることに。詳しい詰め(研究会,講演,シンポジウム,フィールド・ワーク,など)は,これからやっていくことに。こういう話になるととんとん拍子でまとまる。これで決定。あとは,万難を排して実行に移すのみ。

 じつは,この中国旅行については,ここ数年の間,李老師と太極拳の兄妹弟子であるNさんとKさん,そしてわたしの4人で珍道中をやってみようではないか,という計画があった。が,みなさん,それぞれに忙しすぎてなかなか成立しない。これではいつまで経っても実現は不可能に違いない,とわたしは判断し,一年前に日程だけ決めておこうと提案。そして,この9月には李老師とわれわれ3人の間では合意していたのである。そこに陸小聰さんの登場と相成った次第。
 この顔ぶれでの中国旅行には,当然のことながら,いろいろの目的がある。
 ひとつは,なにがなんでも李老師の故郷である昆明に行くこと,そして,中国で一番気候が安定していて快適なところと言われている雲南省を旅行すること。そこでは,少数民族によって温存されているさまざまな伝統芸能に触れることができる。しかも,そこが日本民族とも因縁浅からざる関係があることもよく知られているとおり。ここは1週間くらいではとても日数が足りないと李老師はおっしゃる。でも,そんな贅沢は言ってられない。昆明は,最近では,世界中のスポーツのトップ・アスリートたちが高地トレーニングも兼ねて,集まってくるスポーツのトレーニング・スポットとしてもよく知られている。その設備も完備しているという。
 さらに,Nさんが行くとなれば,上海でも,北京でも,講演やシンポジウムをやってほしいというわたしの知人も待ち構えている。上海は,ここで紹介している陸小聰さんである。場合によっては,わたしにもやってほしい,という。ならば,Kさんにも・・・,ということになる。北京には劉正愛さんが待ち構えている。その他の都市にも,連絡すれば,放ってはおかない知人たちがいる。さて,どの範囲で日程調整をするか,これも楽しみのひとつ。
 それから,なんと言っても,「中国のいま」を現地に立って,その土地の空気を吸ってみたい,というわたしなりの強い思いがある。もう,ずいぶん前に,上海体育学院でのシンポジウムと中国少数民族伝統運動会(南寧市で開催)の取材を兼ねて,大勢の仲間たちとでかけたことがある。上海という都市の開発が着手されはじめたばかりのころだから,どれほどの変貌ぶりなのか,興味津々である。作家の宮城谷昌光さんも書いているように,古い城跡を訪ねていくが,そのほとんどは跡形もなくなっている,でも,そこに「立って,空気を吸う」ことによって小説の構想が動きはじめる,という。まあ,わたしの場合には,それにあやかろうというわけだ。
 こうして書き出すと際限がなくなる。やはり,李老師を先導にお願いして,Nさん,Kさんとわたしの4人が旅をするのだから,なにが起こるかわからないという不確定要素がいっぱいだ。だからこそ面白いのだろうとおもう。
 というわけで,陸小聰さんが来日し,お会いしたことによって,このわたしたちの中国旅行計画は,また,一段と実現への道を歩みはじめた,という次第。この話は,これからもちょいちょい登場することになりそう。ぜひ,そうなるようわたしも努力したいとおもう。
 来年こそ,なにがなんでも実現させよう。これで駄目なら,もう,このさきはない,と覚悟して。

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