2010年12月25日土曜日

「うつ病」で5000人以上の先生たちが休職している,とか。

 今日(25日)のインターネット情報(NHK)によると,学校の先生たちの休職者がこの1年で8,627人であったという。去年よりも49人増で過去最高とのこと。そのうち,うつ病や適応障害など精神的な病気で休職した人が63.3%で,5,458人だという。こちらも去年より58人増で過去最高とのこと。この数字は文部科学省が調査した結果,明らかになったという。しかも,公立の小・中・高校の先生が対象である。ここには私立の先生たちの数は入っていない。それにしては,その数の多さに驚いてしまう。いったい,いま,学校現場でなにが起きているのだろうか。こんなにも多くの休職者がでてくるにはそれなりの原因があるはずである。
 教育委員会の説明によると,1.学校業務が増えたことによるストレス,2.保護者・住民からの苦情増によるプレッシャー,3.初任者の先生たちは予想していたイメージと違う格差によるショック,などが主な理由だとのこと。休職者が年々増えつづける現状に対して,対症療法的な措置はとっているものの,その抜本的な対策はとられていないらしい。というのは,最近,会った中堅どころの気合の入った男の先生からの情報による。
 その先生の話によると以下のとおりである。
 たとえば,50歳台の女性の先生たちの間に,なにか困ったことが起きると,すぐに「うつ病」を理由に休職する人が増えてきている,というのである。「うつ病」を理由にされると,校長先生も手も足も出せないまま,それを認めるしかないのだそうである。そして,しばらく休職して,元気になると復職するのだが,長くはつづかないそうだ。問題は,その先生が休職している間は,だれかが肩代わりをして,二つのクラスの担任をすることになる。たださえ学校業務が多い上に,二クラス分を処理しなくてはならなくなる。もう,すでに,限界を超えている,とかれは嘆く。その現状のきびしさは教育委員会も承知しているので,休職が長くつづくようだと,臨時の教員を派遣してくる。しかし,この臨時教員は,いわゆる教員予備軍なので,実務経験はほとんどない。だから,ことあるごとにこの人の指導に当たらなくてはならない。それがまたたいへんなのだ,とかれは嘆く。場合によっては,いない方が楽だ,とも。
 なぜなら,担任が休職してしまうようなクラスは,それ以前にすでに学級崩壊しているのだそうだ。だから,担任は「うつ病」になってしまうのだ,とかれは言う。で,その崩壊したクラスを,二つ目のクラスとして担任するかれは,必死になって建て直しにとりかかり,なんとか軌道に乗りはじめたかなと思ったころに臨時教員が配属されて,その先生にバトンタッチする。すると,不慣れなために,またまた,学級崩壊を起こすのだそうな。それを,こんどは側面からサポートすることになる。この方が手間暇がかかってたいへんなのだ,という。とても,よくわかる。
 いま休職している女の先生は,じつはとてもやさしい心根の持ち主で,いい先生なのだそうな。しかし,その先生の心根のやさしさに意地悪な生徒たちが付け入って,さんざん悪さをして,先生の言うことを聞かなくなってしまう・・・,その結果として学級崩壊がはじまる・・・,そういう悪循環があるという。だから,男の中堅どころの気合の入った先生が,担任の代理としてクラスにいくと,その悪童たちはおとなしく言うことを聞くのだそうだ。だから,いとも簡単にクラスは機能しはじめる,と。
 こういう心根のやさしい先生は,保護者からも攻撃されてしまう,というのである。いまの親は,先生が「弱い」とわかると「いじめ」にかかる,というのである。いまの世の中で起きていることがそのまま学校で起きているようだ。保護者たちは先生を「勝ち組」と「負け組」とに二分して,「負け組」を徹底していじめにかかるというのだ。なんということが,いま,学校で起きているのか,とわが耳を疑う。そんな風潮が学校社会のなかにも浸透しているとは・・・・?最近では,ますますそれがひどくなっている,とかれは言う。
 もうひとつはパソコンへの適応不能の問題が,高齢の先生たちの間にある,というのである。こどもの扱いは抜群にうまいベテランの先生なのに,学校業務をパソコンで情報処理をするのが苦手という人も少なくない,という。しかも,新しい教育機器はつぎつぎに導入されてくる。それらはすべてパソコン操作と連動している。だから,その取り扱いをおぼえるだけでも大変だという。ここでつまずいてしまうと,先生としての負担は想像を絶するほど大きくなる。そうなると,周囲にいる先生たちが助けの手をさしのべて,なんとかやりくりをしていこうとする。でも,いつもいつも,いいタイミングでサポートできるとはかぎらない。自分の業務だけでもたいへんだから,とても他人のサポートまで手がまわらないことは,いくらでもある。
 その上に,若手の教員は,みんな大学で「情報処理」という授業を必修で受けている。だから,パソコンを自由に扱って当たり前になっている。しかし,ベテランの先生たちにとっては,まったくの素人からの手さぐりでのパソコン技術の習得となる。しかも若いうちならすぐに身につく操作も,ある年齢を超えるととても大変である。超ベテランであるわたしには,そのことの意味はとてもよくわかる。今日2時間かかってようやく覚えた単純な操作を,翌日にはケロリと忘れている。がっかりである。そんなことのくり返しである。そして,そういうベテランの先生たちを,馬鹿にする若手の先生たちが増えてきている,という。つまり,学校現場では「お荷物」になってしまっている,というのである。だから,言っては悪いけれども,あと何年で・・・と指折り数えるようになってしまう,という。
 この他にも,ここでは書けないような話が学校の中ではいっぱい起きている(わたしが聞き知っただけでも)。世の中の狂気が学校社会にまで蔓延しているのだ。この狂気が立ち現れる根源を断ち切らないかぎり,学校の正常化はありえない,とわたしはおもう。しかし,そのための方策を提示できる人がいない。いま,教育学の研究者はなにをしているのだろうか,と首を傾げてしまう。教育の方法論ばかりに眼を奪われていて,肝腎の「人間」の問題(生徒も先生もふくめて)がないがしろにされつつある。困ったものである。
 問題の解決方法はきわめて簡単だ,とわたしは考えている。
 教員に優秀な人材が集まるシステムを構築すること。たとえば,給与を高くすること,休暇を多くすること(たとえば,夏休みなどを完全に休めるようにすること,そして,教員としての自己研修が十分にできるようにすること,など),学校業務を少なくすること(事務職員を増員して教員の負担を軽減すること)。たったこれだけで,教員はかなり魅力的な職種となる。そうすれば,おのずから優秀な人材が集まるようになる,とわたしは考えるのだが・・・・。
 最大のネックは,教育にお金をかけるという政治的判断が欠落していること。明治以後の日本の驚異的な躍進を支えた立役者のひとりは,学校の先生たちだった。優秀な先生たちが優秀な生徒を育てあげた。その先生を養成する師範学校では,その生徒たちに給料を支払っていた。だから,家庭の事情で上級学校にいかれない優秀な人材が師範学校に集中した。だから,師範学校に入学するにはたいへんな競争率を突破しなくてはならなかった。しかも,卒業後は確実に教員になれた。しかも,社会的地位もきわめて高かった。
 いま,考えてみると夢のような話である。しかし,そんなことを言っていてもはじまらない。なにはともあれ,教育予算をしっかりと確保して,抜本的な改革をしないかぎり,学校現場はますます荒廃していくばかりだ。いまは,かろうじて,教育に情熱を傾けることのできる熱いハートをもった一握りの優秀な教員によって,ボーダーラインぎりぎりのところで踏みとどまっているにすぎない。痩せ細ってしまった教育予算を,まずは,増やすこと。そのためには,小回りのきく地方自治体から運動を起こすことが先決ではないか,とわたしは考える。
 ハシモト君やカワムラ君あたりが,声を大にして,この問題に取り組んでほしいとおもう。イシハラ君でもいい。ヒガシ君でもいい。なんとかせにゃ,あかんがや。感が鈍ってしまったカン君を待っていてもはじまるまい。のん,ほい(三河弁)。
 こんな話を,つい最近,聞いたばかりだったので,今日のインターネット情報には思わずしらず目がとまり,学校の先生もたいへんな時代になったものだなぁ,とあらためて考えることになった次第である。 

1 件のコメント:

奈良のM さんのコメント...

仮に優秀な人材が集まっても、30年も同じ仕事をしているとマンネリというか、意欲の低下が起こるんでしょうね。子ども相手だし、ある程度のノウハウが出来れば、のほほんとしていても勤まるわけで、相当な事件でも起こさない限り懲戒や減給すらない。そりゃ、怠慢にもなるでしょう。優秀な人材の確保はもとより、能力給の導入、ダメな人材をクビに出来る制度を導入してほしいですね。
それ以前に教員が自己研修を詰めるくらいの時間があればそういう問題も起こりにくいんでしょうが。5年勤めたら1ヶ月研修するとか。1年研修してからでないと現場に出られないとか。
学級崩壊させてしまったら1年研修するとか。

教育予算は倍増=教員数を倍に増やす くらいしてもらわないと、とても現場はやってられないですよ。まあ、年功序列賃金制で、高い給料もらって働かない高齢教員を1人減らせば、意欲のある若い教員が2人雇えるので、教育予算倍増しなくてもいいんですけど、とにかく人手(人材)不足ですね。
40人学級なんて何十年前の制度なんでしょう。今や5年一昔と言われる位なのに、いっこうに35人学級にはならない。金と手間暇をかけなきゃ、今の子どもは育ちませんよ。
兄弟少なくて、あるいは一人っ子で育っている子(保護者も)ばかりですから。
30人学級の実現は急務でしょうね。

年々ハードになっていく保護者対応。せめて、保護者の筋違いなクレームに対応する教員を1人でも雇ってくれたら、ちょっとでも子どものことを見てあげられる時間が作れるのに。