2013年3月19日火曜日

不可解な全日本柔道連盟の理事会決定。だれも責任をとらないニッポン国の見本。

 「ブス,ブタ,死ねっ!」「お前らは家畜か」と怒鳴ったと伝えられる女子柔道前監督を,15選手の告発後も「続投」させようとした現執行部が,誰一人として責任をとることもなく,留任が決まった。おまけに,現執行部の体質に問題がある,と反省を迫り辞意表明までした田辺勝監督代行を,謝罪して留意させ,次期女子代表監督昇格を約束までしておいて,土壇場で切って捨ててしまった。やはり,執行部に楯突く人間は処分される,という暗黙の了解事項がこれで明るみにでてしまった。この体質こそが問われたのが,今回の騒動の発端にある。にもかかわらず,そのことはどこ吹く風とばかりに,なんの反省の色もみられない。むしろ,居直ったか,とわたしにはみえる。

 告発15選手をサポートした山口香さんの談話が鮮烈だ。短いので引用しておく。
 「この決定を世間はどう見るか。自浄作用のない組織だということだ。これまでわれわれ女性たちは理事に入れてもらえなかったが,逆にこのメンバーに入っていなくてよかったと思うほどだ。執行部はこれからどんなことが起きても辞める気はないのだろうし,この組織は何があっても変わらないと実感した。」

 敢然たるダメだしである。わたしも同感だ。まったくもって手の施しようもない。

 たぶん,こんなことになるだろうとは想像していても,それでも,わずかに救いがあるかと期待していたのは,佐藤宣践副会長が17日の記者会見で,「不祥事を招いた責任を問い,上村春樹会長に辞任を求める」という考えを明らかにしていたからだ。しかし,それも徒労に終わった。理事会では,佐藤副会長が自らを含む執行部の辞任を持ち掛けたが,他の役員からはほとんど意見が出ないまま,採決にも至らなかったという。もう,事前に,しっかりと裏で手を結んでいたことが透けてみえてくる。

 他方では,日本スポーツ新興センターから選手強化のために指導者が受ける助成金の一部を強化委員会が徴収していたという不祥事が起きている。しかも,それを「飲み食い」に使っていたという。この問題についても,「調査チーム」を設置して,助成金の使途としての正当性などの実態解明につとめる,という。この腐り切った「体質」で,そんなことができるはずもない。それを平然とやろうとしている。いつかみた「原子力保安委員会」の悪夢と同じである。

 こんごは,第三者委員会による報告書をもとに,これから具体的な改革に着手するという。そして,そのための計画を,26日の臨時理事会で練るという。とりあえずは,お手並み拝見というところ。

 でも,そのさきは見えている。こんな,だれも責任をとらない,自浄能力を欠く組織にどんな改革ができるというのか。みんな「仲良しクラブ」のぬるま湯に浸ってきた「ゆでガエル」で,身の保全にのみ熱心なオホモダチが,みずからの身を切って膿を出すなどということができるわけがない。みんなでお互いの脛の傷を舐め合いながら,みせかけの「改革」を提示するのが関の山だ。

 きちんとした意見を述べる人はみんな切り捨てられていく,そんな体質を十分に承知した上で,なおかつ「内部告発」に踏み切った15名の女子選手たちの果敢な勇気に,いまさらながらこころからの敬意を表したい。ブスと言われようが,ブタと言われようが,ひたすら「家畜」のように盲目的に服従し,かつ,率先して「自発的隷従」する者だけが生き残ることのできるこの「体質」にこそ問題があるとして,勇猛をふるって立ち上がった15名の女子選手たち。この人たちの,最後の一縷の希望も,これで完全に裏切ることになった昨日の理事会。

 佐藤副会長ただひとり,みずからも含めて責任をとろうと提案したのに,それに応ずる人がほとんどいない,未熟で自立していない人間の集団。それこそが問われているというのに・・・・。

 山口香さんが,以前にも談話を発表しているように,柔道は,まずは,ひとりの人間として自立・自律することを学ぶ行であって,強い/弱い,勝った/負けたはそのつぎの話なのだ。この伝によれば,現執行部,および,理事の諸氏は,圧倒的多数が「自立・自律」できていない,中途半端な人たちだということになる。すべての序列の基準は段位と優勝経験にある。この人たちの頭のなかには「金メダル」しかないのだろうか。

 どこぞのおぼっちゃまリーダーのように,「カネ」が大事で,「命」は二の次という体質ととてもよく似ていらっしゃる。困ったものだ。もちろん,こちらの人にこそ「自立・自律」してもらわなくては・・・。

 もちろん,それを許しているわれわれもみんな同罪なのだが・・・・。

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