待望の『スポートロジイ』第2号が,今朝(7月19日)の10時に配達されました。大急ぎで梱包を開いてじかに手にとりました。やはり,感動でした。落ち着いた渋いシルバーの表紙がいい感じです。ベージをめくりながら,あれこれの感慨が一気に押し寄せてきました。からだを張った仕事が世にでるということの喜びはなにものにも代えがたいものです。これから取り次ぎを経て書店にも並ぶ予定。ただし,発行部数が多くないので大型店のみだと思います。どこかで手にとってじかにご覧いただければ幸いです。
このブログでは,第2号の「巻頭のことば」を紹介させていただきます。第2号の概要を把握するには便利だと思いますので。
●巻頭のことば
スポーツのグローバル化とドーピング問題にどう向き合うか。
「スポートロジイ」(Sportology=スポーツ学)と銘打つ新たな「学」を立ち上げ,その実績を世に問うために,われわれはどこから手をつければいいのか,と考えつづけてきた。当然のことながら,しかるべき手順を踏んで,一歩一歩前に進むべきではないか,と悩み考えた。しかし,そういう近代的なアカデミックな方法論の呪縛にとらわれているかぎり,モダニティに取り囲まれたフィールドの内側でのリング・ワンデルングから抜け出すことはできない,と気づく。ならば,モダニティの呪縛の外に飛び出し,まずは,隗より始めよ,である。
われわれ「ISC・21」(21世紀スポーツ文化研究所)の研究員が,ここ数年にわたって取り組んできた研究テーマのひとつは「グローバリゼーションと伝統スポーツ」であり,もうひとつは「ドーピング問題」であった。前者のテーマについては,2012年8月に開催された第2回日本・バスク国際セミナー(神戸市外国語大学主催)で議論され,一応の成果をあげえたと考えている。そして,後者のテーマは「ISC・21」が主催する月例研究会でたびたび議論を積み重ねてきたものである。そこで,この二つのテーマを第2号の特集テーマとして設定することにした。
第一特集・グローバリゼーションと伝統スポーツには,国際セミナー開催時に特別ゲストとして参加していただいた今福龍太,西谷修の両氏による基調講演が収められている。お二人とも,「ISC・21」の月例研究会にも何回も足を運んでくださり,わたしたちの意とするところを充分にくみ取ってくださった上での基調講演である。「スポートロジイ」の新たな可能性に道を切り開く貴重な示唆に富んでいて,わたしたちを大いに勇気づけてくれる内容になっている。また,それに呼応するようにして若手研究者による原著論文3本がつづく。これまでの閉塞的な研究方法論の枠組みを悠々と乗り越え,伸びやかな感性のもとで魅力的な論考を展開している。
第二特集・ドーピング問題を考える,の2本の論考もまた鮮烈をきわめる。1本は,これまで門外不出とされてきたドーピング・チェックの世界にメスをいれた元ドーピング・ドクター伊藤偵之さんによる研究報告である。眼からウロコが落ちる,そういう情報に圧倒されること間違いなし,の論考である。もう1本は,フランスの哲学者パスカル・ヌーヴェルによるドーピング問題の核心に触れる論考である。アンチ・ドーピング運動の正当性が根底から揺さぶられる問題提起となっている。橋本一径さんの手による気合の入った翻訳紹介。いずれも本邦初公開であり,ドーピング問題に関心をもつ人にとっては必見・必読の論考である。
これらの特集に加えて,もう1本の貴重な論考を上梓した。わたしたちの月例研究会では,ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン──惨事便乗型資本主義の正体を暴く』上・下(幾島幸子・村上由見子訳,岩波書店,2011年)の読書会を積み上げ,議論を重ねてきた。そして,最後にその仕上げの意味で西谷修さんを囲む「合評会」を開催した。そのときのメモリアルとして西谷修さんが書き下ろしの論考を寄せてくださった。わたしたちの熱意に応答する西谷さんの渾身の力作といっていい。グローバリゼーションとはどういうことなのか,を考えるための重要な礎を得た思いである。いまも加速しながら進展をつづけるスポーツのグローバリゼーションの問題系を考える上でも,これからますます重要視される論考になることは間違いないだろう。
最後に,「スポーツとはなにか」という根源的な問いをつねに内に秘めつつ,その問いに応答しうる思想・哲学的な根拠を求める「研究ノート」(スポーツの<始原>をさぐる──ジョルジュ・バタイユの思想を手がかりにして)を掲載した。なぜ,ジョルジュ・バタイユの思想に注目するのか,なぜ,「スポートロジイ」の根拠をそこに求めようとするのか,を明らかにしようという意欲作である。
以上が第2号の概要である。
21世紀のスポーツ文化を模索する「ISC・21」の研究紀要『スポートロジイ』の第2号が,西谷修,今福龍太,橋本一径,伊藤偵之の4氏の力強い後押しによって,無事に世に送り出されることをこころから感謝したい。そして,これを励みに,毎月開催している月例研究会により一層の情熱をそそぎたいと思う。さらには,今日から,第3号の発行に向けて準備に取りかかりたい。
併せて,読者のみなさんからの忌憚のないご批判をいただければ幸いである。
2013年6月15日 ようやく梅雨らしくなってきた空を見上げながら
21世紀スポーツ文化研究所(「ISC・21」)主幹研究員 稲垣正浩
以上です。これからどんな反響が返ってくるのかワクワクしています。みなさんもご覧になっての感想やご意見などお聞かせいだだければ幸いです。
取り急ぎ,第2号がとどきました,というご報告まで。そして,ちょっと凄いことになっています,という予告まで。
このブログでは,第2号の「巻頭のことば」を紹介させていただきます。第2号の概要を把握するには便利だと思いますので。
●巻頭のことば
スポーツのグローバル化とドーピング問題にどう向き合うか。
「スポートロジイ」(Sportology=スポーツ学)と銘打つ新たな「学」を立ち上げ,その実績を世に問うために,われわれはどこから手をつければいいのか,と考えつづけてきた。当然のことながら,しかるべき手順を踏んで,一歩一歩前に進むべきではないか,と悩み考えた。しかし,そういう近代的なアカデミックな方法論の呪縛にとらわれているかぎり,モダニティに取り囲まれたフィールドの内側でのリング・ワンデルングから抜け出すことはできない,と気づく。ならば,モダニティの呪縛の外に飛び出し,まずは,隗より始めよ,である。
われわれ「ISC・21」(21世紀スポーツ文化研究所)の研究員が,ここ数年にわたって取り組んできた研究テーマのひとつは「グローバリゼーションと伝統スポーツ」であり,もうひとつは「ドーピング問題」であった。前者のテーマについては,2012年8月に開催された第2回日本・バスク国際セミナー(神戸市外国語大学主催)で議論され,一応の成果をあげえたと考えている。そして,後者のテーマは「ISC・21」が主催する月例研究会でたびたび議論を積み重ねてきたものである。そこで,この二つのテーマを第2号の特集テーマとして設定することにした。
第一特集・グローバリゼーションと伝統スポーツには,国際セミナー開催時に特別ゲストとして参加していただいた今福龍太,西谷修の両氏による基調講演が収められている。お二人とも,「ISC・21」の月例研究会にも何回も足を運んでくださり,わたしたちの意とするところを充分にくみ取ってくださった上での基調講演である。「スポートロジイ」の新たな可能性に道を切り開く貴重な示唆に富んでいて,わたしたちを大いに勇気づけてくれる内容になっている。また,それに呼応するようにして若手研究者による原著論文3本がつづく。これまでの閉塞的な研究方法論の枠組みを悠々と乗り越え,伸びやかな感性のもとで魅力的な論考を展開している。
第二特集・ドーピング問題を考える,の2本の論考もまた鮮烈をきわめる。1本は,これまで門外不出とされてきたドーピング・チェックの世界にメスをいれた元ドーピング・ドクター伊藤偵之さんによる研究報告である。眼からウロコが落ちる,そういう情報に圧倒されること間違いなし,の論考である。もう1本は,フランスの哲学者パスカル・ヌーヴェルによるドーピング問題の核心に触れる論考である。アンチ・ドーピング運動の正当性が根底から揺さぶられる問題提起となっている。橋本一径さんの手による気合の入った翻訳紹介。いずれも本邦初公開であり,ドーピング問題に関心をもつ人にとっては必見・必読の論考である。
これらの特集に加えて,もう1本の貴重な論考を上梓した。わたしたちの月例研究会では,ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン──惨事便乗型資本主義の正体を暴く』上・下(幾島幸子・村上由見子訳,岩波書店,2011年)の読書会を積み上げ,議論を重ねてきた。そして,最後にその仕上げの意味で西谷修さんを囲む「合評会」を開催した。そのときのメモリアルとして西谷修さんが書き下ろしの論考を寄せてくださった。わたしたちの熱意に応答する西谷さんの渾身の力作といっていい。グローバリゼーションとはどういうことなのか,を考えるための重要な礎を得た思いである。いまも加速しながら進展をつづけるスポーツのグローバリゼーションの問題系を考える上でも,これからますます重要視される論考になることは間違いないだろう。
最後に,「スポーツとはなにか」という根源的な問いをつねに内に秘めつつ,その問いに応答しうる思想・哲学的な根拠を求める「研究ノート」(スポーツの<始原>をさぐる──ジョルジュ・バタイユの思想を手がかりにして)を掲載した。なぜ,ジョルジュ・バタイユの思想に注目するのか,なぜ,「スポートロジイ」の根拠をそこに求めようとするのか,を明らかにしようという意欲作である。
以上が第2号の概要である。
21世紀のスポーツ文化を模索する「ISC・21」の研究紀要『スポートロジイ』の第2号が,西谷修,今福龍太,橋本一径,伊藤偵之の4氏の力強い後押しによって,無事に世に送り出されることをこころから感謝したい。そして,これを励みに,毎月開催している月例研究会により一層の情熱をそそぎたいと思う。さらには,今日から,第3号の発行に向けて準備に取りかかりたい。
併せて,読者のみなさんからの忌憚のないご批判をいただければ幸いである。
2013年6月15日 ようやく梅雨らしくなってきた空を見上げながら
21世紀スポーツ文化研究所(「ISC・21」)主幹研究員 稲垣正浩
以上です。これからどんな反響が返ってくるのかワクワクしています。みなさんもご覧になっての感想やご意見などお聞かせいだだければ幸いです。
取り急ぎ,第2号がとどきました,というご報告まで。そして,ちょっと凄いことになっています,という予告まで。
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